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2024.10.08

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この長野の郷土料理、まさかの激辛!開店前から並ぶ名店で「おしぼりうどん」を実食



オーシャンズ推薦「みんなの“C級グルメ”」とは……

2020年、ペヤングから発売されたソースやきそば「超超超超超超大盛やきそばペタマックス」や「獄激辛やきそば」を覚えているだろうか。

当時YouTubeでも日々実食動画があふれ、数々のYouTuberたちが汗と涙と鼻水を垂らしながら昇天する姿を見ているのが、日課となっていた。

時は経ち、2024年。「超超超超超超大盛やきそばペタマックス」と同等、いやそれ以上かもしれないという辛いうどんが、長野県の郷土料理になっていると聞いて足を運んでみた。

「長野といえばそばじゃないの?」と思いながら目的地の長野県埴科郡坂城町へ向かうと、道中で「手打ちうどん」の看板がちらほら見えてきた。

目指す店は「手打ちうどん 十割そば かいぜ」の「おしぼりうどん」。昼時は行列ができるというので、開店に合わせて入ろうとしたが、駐車場に到着すると平日にも関わらず、車の中で待機している人が数組。しかも他県ナンバーもいるではないか。



駐車場の目の前にはヤギとウサギ小屋が。人懐っこそうなヤギがかまってほしそうにこっちを見て鳴いている。11時30分の開店と同時に、待っていた数組が店の中へと消えて行った。事前情報によると麺はなくなり次第終了とのことで、出遅れてはいられないと後へ続く。



この「かいぜ」は、坂城町へ嫁いだ女将が祖母から受け継いだうどんを提供している店だ。扉を開けると、座敷が22席ほど。メニューは至ってシンプルに、「手打ちうどん」「手打ちそば」「わがままセット(半人前ずつのうどんとそば)」の3種類。それぞれつけ汁をめんつゆか「おしぼり」を選ぶことができる。ここは迷わず看板メニューである「手打ちうどん」でつけ汁は「おしぼり」をオーダーした。



「おしぼりうどん」の特徴は、なんといってもつけ汁代わりに大根の絞り汁を使うところ。それも、地元特産の「ねずみ大根」というねずみのような形をした強烈な辛味大根を使用している。

この大根をすりおろすのだが、大根おろしに付けて食べるといった普通のものではない。「おしぼり」という名の通り、ねずみ大根の「絞り汁」をベースにしたつけ汁に、うどんをどっぷりと浸けて食らうのだ。しかもこちらのねずみ大根は女将の旦那さんが自社農園で栽培している無農薬ものだという。
 

そして待つこと数分で着丼。見た目はとってもシンプルで、強烈なインパクトがあるわけでもない。だが、プーンと香る辛味大根の匂いが、その辛さをしっかりと主張してくる。

「おしぼり」を箸の先につけて舐めてみると……。ん? 大根の甘みを感じるぞと思った次の瞬間、鼻の奥に突き刺さる強烈の辛さが! 「い、い、痛い……」。ペヤングの「獄激辛やきそば」を食べたときの辛さとはまったく違うアプローチで、思わず声が出てしまった。

だが、ここであきらめるわけにはいかない。2口3口食べ進めると、だんだんと口の中が麻痺してきて、辛味大根の旨味と甘みが感じられるようになった。

このつけ汁と合わせるうどんも、あえて塩を加えず打った自家製手打ち麺で、噛みごたえも十分。コシもかなり強く、「ラーメン二郎」の麺を彷彿させるそのビジュアルで、しっかりつけ汁をリフトアップしてくれる。
 


大根のつけ汁は、お好みで信州味噌と鰹節、そしてネギを入れて味変することもできる。信州味噌の柔らかなコクと鰹節の風味が大根の辛味を際立たせ、口の中に爽快な刺激が広がってくる。

だが、このうどんの奥深さはそれだけじゃない。辛さの後にやってくるのは、ほのかな甘み。このギャップが食べる人を虜にするのだ。

辛いのが苦手な人やおしぼりうどん初心者は、追加で味噌を足すことも可能。「辛党をもうならせる逸品」と言われるのも納得できる。

実はこのおしぼりうどん、歴史も深い。松尾芭蕉の句にも登場するほど、昔から地元の人々に愛されてきたソウルフードなのだ。

坂城町では、数軒の飲食店でこのおしぼりうどんが味わえる。うどんだけでなく、そばでも楽しめるのだ。地元客も足しげく訪れる人気メニューとなっている。



そばは付け汁に大根汁をお好みで入れていく。



このねずみ大根は、他の県産地大根と比較して、圧倒的な辛みと糖度を持っている。「ねずみ大根」が最も旬な時期は、11月から12月とのこと。その時期には地元の直売所でも並ぶそうだ。

東京から来たという隣のテーブルの人たちが口にした「ワサビは鼻から抜けるけど、ねずみ大根の辛さはずっと口の中に残っている」という言葉の通り、「おしぼりうどん」は清楚な見た目を裏切る味なのだ。

汗をかきながら食べる快感を求めるなら、このおしぼりうどん一択。一度食べれば、その強烈なインパクトは、きっと忘れることができないはずだ。

アントレース=取材・文

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