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海が好きだったからこそ、進む環境破壊に気づいた



ーー環境問題は多岐に渡りますが、なかでも海に着目した理由はどういった点でしょうか?


エリック もともとサーフィンやダイビングが趣味なんです。マリンスポーツをずっとやってきましたが、ある頃から湘南や葉山の海に潜ると、熱帯魚を見ることが増えてきました。

通常、海流に乗って熱帯魚の卵が流されてきても、水温が低いと冬を越すことは難しい。それなのに、越冬し成魚となった熱帯魚を春先の海で見かけることが増えた。

沖縄にいるサーフィン仲間も、温暖化の影響で海水温が高くなったり、珊瑚礁が死んでしまっていたりするのを目にし、環境が壊れてきていることを実感していました。海が身近だっただけに、自分たちにできることをやりたいと思ったんです。

ーー現在の海の状況、海洋プラスチックの状況をどう見てますか?

エリック 世界のどこか一カ国だけではとても解決できない問題だと思います。例えば 、日本は他国と比べてポイ捨てが少ないですが、 廃棄プラスチックを大量に輸出しているんです。そして輸出先は、OECDに加盟していない国。

受け取る側は、受け取ってリサイクルすることを約束しているのですが、不明瞭な部分も多い。私たちのタイにあるNPO法人で調べたところ、リサイクルしやすいものだけを選別し、それ以外はゴミとしてそのまま放置したり海や川へ流したりしていることがわかっています。

※OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関。

ーー日本では出したゴミはそのままリサイクルされていると思っている人が多いかもしれません。

エリック 日本において、ほとんどの家庭ゴミが焼却されていますが、事業所からの廃棄プラスチックの輸出が本当に多いのです。以前は中国に輸出していました。現在は中国で「廃棄プラスチックの輸入禁止法律」が施行されたので、東南アジアに輸出されています。それがゴミ焼却場施設を多く持たない国だとしたら、ゴミがどうなるかは容易に想像できるでしょう。そのまま溢れて廃棄されてしまうことになりますよね。

循環型リユースプラットフォーム「ループ」の取扱製品

循環型リユースプラットフォーム「Loop」の取扱製品


ーー廃棄プラスチック自体を減らすことが、ますます重要になってきますね

エリック 現在テラサイクルジャパンは、国連がまとめようとしている「国際プラスチック条約」制定を応援する日本の企業連合のリーダーになっています。

この企業連合は、ロッテやユニチャーム、ユニリーバジャパン、キリンホールディングス、日本コカ・コーラなど合計10社で構成されています。

条約確定を目指して議論されている点は、廃棄プラスチックを減らすことです。リサイクルの解決策を増やしたり、リサイクル原料使用の推進などが挙げられますね。

国際条約ができると、各国に法律の策定が求められますし、日本にも変化が起きるのではないかと期待しています。先日アメリカでは、プラスチックの製造制限を実施しようと、ホワイトハウスから正式なプレスリリースが発表されました。

アメリカがそこまでの態度を示したことは大きな出来事だと感じています。



ーーエリックさんが普段の生活の中で、環境保全のために習慣にしていることはありますか?

エリック ペットボトルの飲み物を買わないことです。マイボトルを常に持ち歩いて緊急事態以外は買わないようにしています。

購入した本数も1年を通じて5本ぐらいでしょうか。ペットボトルゴミが減るのでごみ置き場へ行く回数も少なくなって、その面でもストレスフリーですよ。

私は炭酸水が好きなのですが、今は自宅で作れる時代ですし、炭酸水がキープできる水筒もあるので活用しています。

また、私もスタッフも水道水をブリタで浄水して飲んでいるのですが、最近テラサイクルでカートリッジの回収を始めました。自分の使うものが環境負荷軽減につながっているのは、やはりうれしいですね。


環境負荷をを減らすためには、誰かがやるだろうではなく、自分ごとに捉える必要がある。普段の自分の行動一つひとつを見直すことは、地球を守る大きな一歩につながるのだ。

豊田和志=写真 佐々木 彩=取材・文

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