「珍稀車図鑑」とは…… カーカスタムのプロ、エスアンドカンパニーの鹿田能規さんが出合った珍稀車(珍しい&稀少な車)を紹介する本連載。
今回は番外編として、鹿田さんがこれまで所有してきた愛車たちを一気に紹介。車のプロはどんな愛車遍歴を持つのか。拝見!
【写真12点】「カーカスタムにハマるきっかけは中古のBMW3」の詳細を写真でチェック 案内人はこの方! 鹿田能規さん●関西と関東に拠点を構えるエスアンドカンパニー。スーパーカーからノスタルジックカーまで車作りの第一人者として全国にその名を馳せる。www.s-company.jp
BMW3シリーズとの出合いでカーカスタムの道へ
ども。珍稀車ハンターの鹿田です。おかげさまで、連載を始めてからちょくちょく「鹿田って誰や?」「エスアンドカンパニーって何や?」とお問い合わせをいただくことが増えたんで、今回は僕の愛車遍歴を紹介したいと思います。
ボクは31歳まで調理師やったんです。もともと車業界の人ではないんです。それが1年に3回くらいカスタムカーを作っては乗り替え、作っては乗り替えしていました。まあ、ほとんど病気ですね(笑)。
その始まりは、調理師時代に買った中古のBMW3シリーズでした。E36のセダンです。1990年代の後半、もうすぐ21世紀!という頃です。
これがE36のセダンです。当時の愛車の写真が見つからなかったので、メーカーの写真をお借りました。
調理師でしたが、車は好きだったんです。特にカスタムカーショーに出るような車が。スポットライトを浴びている車が、すごく格好良くてね。
当時はBMW純正のアルミホイールよりBBS製アルミホイールのほうがエラかったし、純正のバンパーなんて外してシュニッツァーのパーツを付けてたほうがエラかったんです。
今みたいにインターネットなんて普及していなかった時代ですから、車の情報を手に入れるには、雑誌かショップしかありませんでした。特に輸入車は。発売日に書店に並ぶ雑誌が、いつもキラキラして見えたくらいです。
E46のM3です。E46はかなり好きな車だったので、結局3台乗りました。
これも愛車のE46です。
これがノーマルのE46のM3(メーカーの写真)。これをカスタムしていたわけです。
何しろ当時は国産カスタムカーの全盛期でしたから。スカイラインGT-RとかVIPセダンとか、やんちゃなミニバンとか。そういった国産カスタムカーを手がけるショップはたくさんあったけど、輸入車はあまりなかったんです。
あの頃はBMWやメルセデス・ベンツに乗っているってだけでも、一目置かれました。そんな“ガイシャ”をカスタムしてくれるお店なんて、数は少ないし、敷居が高い。特に関西にはほとんどなかったんです。雑誌に載っている有名ショップなんて、たいてい関東のお店でした。
初代Z4をガルウイングにした愛車です。ドイツにガルウイングキットを販売しているメーカーがあったので、そこから購入して取り付けました。
ノーマルの初代Z4。ドアはこのように普通のヒンジドアでした。
それでも一度、手に入れたE36をカスタムしようと、関西の某有名輸入車ショップを訪れたことがあるんです。ドアを開けたら、ズラっと常連さんが座っているような。僕の車を見て「なんやこのノーマル車」と言っているような。店長も「で、ボクちゃんはいくら持ってきたのかな?」みたいな顔をして(笑)。
欲しいパーツを買おうとしても「こっちのほうがいいよ」とか、自由に選ばせてくれないので、結局そのショップでは何も買わずに出てきました。
そういう時代に、E36の320iセダンを、雑誌を見ながら少しずつカスタムしてたんです。
ちなみに僕が初めて新車で買った車が、このE92(3シリーズクーペ)の335i。直6、3リッターのターボはすごく速いのにとても乗りやすかったです。
ご参考までに、ノーマルのE92です。
E36のあとに買ったのがE46のM(3シリーズセダンのMモデル)でした。たまたまヤフオク!を見てたら、マニュアルのM3が売りに出ていて。しかも出品者はうちから近い。ちょっと1回見てみようかな、なんて見にいったら最後ですよね、車って。もうどうしても欲しくなって。でも当時は現金でM3を買うお金なんてなくて。
とにかく頭を下げまくったら、店主はボクの熱意に負けたのか、「現金2回払い」という前代未聞の支払い方法を承諾してくれたんです。ローンじゃないですよ。親父にも頭を下げて頼み込んで現金を借りて、他は一所懸命働いて稼いで、何とか「現金2回払い」で手に入れることができました。
振り返ると、これがターニングポイントでしたね。
手に入れてから、やっぱりホイールを替えたり、いろいろイジったりしていたら、たまたま知り合ったホイールショップの人から「東京のカスタムカーのショーに出展してみないか」と誘ってくれたんです。
初代X5 4.6is にも乗りました。この色はエストリルブルーといって本来Mモデルの色なんですよ。でもどうしても欲しくて、アメリカから並行輸入しました。純正ナビは日本のデータに載せ替えました。
こちらがノーマルのX5。売れた車ですから日本でもよく見かけましたが、みんな白か黒ばかりで、エストリルブルーのX5なんて、誰も乗ってませんでしたね。
で、モーターショーに出てみたら、その日から世界が突然変わりました。
今までは写真を撮る側だったのが、いろんな人が自分の車にカメラを向けて僕の車の写真を撮ってるんですよ。
雑誌も何誌も取材してくれて。そんな経験あるわけないじゃないですか。クセになっちゃって(笑)。それが今に繋がってます。
BMWは好きでしたね。メーカーが言うとおり“駆け抜ける歓び”がSUVでもあって。E46はこれまで3台乗ってます。ほかにもZ4とかX5とか、E92のクーペとか……。Z4の時はどうしてもガルウイングドアの車に乗りたくて、当時持っていたZ4にドイツのLSDと言う専用キットを取り付けてガルウイングに改造したんですよ。
そしたらカスタムカーショーで「なんでZ4をガルウイングにしたんだ」とか「こんなのZ4じゃない」とか「これは格好良い!」とか、賛否両論、とにかく色々なことをいってもらえました。雑誌にも自分のインタビュー記事が掲載されて、Z4のガルウイングについて語っている自分が写真とともに載っているんです。
カスタムカーショーに出すことで、見ている側から、見られる側になってしまった。夢のような世界だと思います。「で、一体何台乗り換えてきたんだよ」と思われてそうですが、現時点で計30台くらいの車に乗ってきました。
調理師がなぜ今の仕事についたのか、「エスアンドカンパニーって何や?」については次回お話しします。