面倒なやつだと思われても「表現者は庶民の味方」
小説の題材に現実的な社会問題を選んだ星田さんだが、自身のSNSでは何年も前から積極的に自分の考えを発信してきた。言葉を控える著名人が多いなか、仕事への影響はなかったのだろうか。
「いい影響なんて一切ないですよ。面倒なやつだなって思われるだけですから。でも、表現者っていうのはやっぱり庶民の味方だっていう考え方が、自分には絶対にあるので。
僕はいま53歳で、次の世代へのバトンタッチは済んでると思ってます。だから、いまは若い世代の未来に間借りさせてもらってる感覚。大人が少し苦しんで、もがいて、いい世の中を作れるんだったらそうしようぜって思います。それが社会での大人の役割だと思うんで」。
役者でも、小説家でもいい。「ずっと表現していたい」
終始、若い世代に対する想いが溢れた星田さんだが、小説を通してエールを送るつもりはないという。
「僕だってわかってないんです。いまも苦しいし、ちょっとずつ削られて行ってます。死神に追っかけられて、逃げて、また追っかけられての繰り返し。年を取ってきて、逃げ足が鈍くなってるし、傷の治りも遅くなってる気がします。
そんな僕だから、本を通して若者にエールを送る気はないんです。ハッピーエンドの物語だとも思ってないし、頑張れっていうのもない。僕ももがいてるんで。ただ、何も言えずに黙っている人の存在を僕は知ってるし、その辛さもわかっているつもりだよと伝えたい」。
インタビュー中「エールを送る気はない」と話した星田さんだが、小説のなかでは途方に暮れる主人公に一筋の光が刺すような言葉が綴られている。
最後に、星田さんの今後の抱負も聞いた。
「とにかく打席が欲しいですね。どんな打席でも絶対にヒットを打つ気はあるので。ずっと働いていたいし、ずっと表現していたい。それが僕の願いです。『ほっしゃん。出てたの』って言われるくらい、作品に溶けこむ役者になりたいし、猟奇的な役とかもやってみたいですね」。
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辛酸を舐めた人は優しいし、時代を正視する人は頼もしい。説得力のある存在が今後も演劇の世界で活躍するのは楽しみだが、庶民の味方であるお笑いの世界でも芸人・星田さんの姿をまた見たい。切に願う。