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2024.09.09

からだ

“怒りっぽい人”が使いがちな言葉4選!「アンガーマネジメントの6秒ルール」をプロが伝授

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もはや何度耳にしたかわからない「旦那が怒りっぽい」という愚痴。

「いやいや、そっちのほうが!」という人も、「俺は怒りっぽくないから関係ない」という人も、ちょっとギクッとした人も、ぜひこの記事を読んでほしい。怒りのコントロール術は、ストレス溢れる社会を生き抜く現代人の必須能力だからだ。

今回は、企業講習や数々のメディアで怒りとの上手な付き合い方を説いている日本アンガーマネジメント協会代表の戸田久実さんにお話を伺った。
話を聞いたのはこの人!
戸田久実さん●日本アンガーマネジメント協会代表理事。講師歴32年、登壇数4,500、指導人数は22万人を超える。『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(日経文庫)や『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)など多数の著書があり、中国、韓国、台湾、タイで翻訳、愛読されている。

戸田久実さん●日本アンガーマネジメント協会代表理事。講師歴32年、登壇数4,500、指導人数は22万人を超える。『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(日経文庫)や『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)など多数の著書があり、中国、韓国、台湾、タイで翻訳、愛読されている。

「こうあるべき」が破られたときに人は怒る!

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――まず、なぜ人は些細なことでイラッとしてしまうのでしょう……?

そもそも怒りとは、主に「自分の“こうあるべき”=譲れない価値観」が破られたときに湧くものです。人それぞれ、さまざまな“べき”を持っていますが、その数が多ければ多い人ほど、その許容範囲が狭ければ狭いほど細かなことで怒りやすくなります。

――例えばどんな“べき”がありますか?

自覚していないだけで皆さんありますよ。「これは常識だろう」「これは当たり前だろう」「普通こういうときは、こうするだろう!」と思ったことはありませんか? その言葉の裏に“べき”が隠れています。

よく耳にするのは、家庭内だと「仕事で疲れて帰ってきた人は家事を免除されるべきだ」とか、仕事では「新人なんだから挨拶は大きな声ですべきだ」など、挙げるとキリがないほどありますね。

ただ、ここで気を付けてほしいのは、“べき”の全てが悪ではないということ。“べき”は、いわば自分の理想、願望、価値観を象徴する言葉ですから、むやみに失くすのではなく“べき”が破られたときに生じる怒りをコントロールすることが大切です。

――自分は果たして怒りっぽいのか、わかりません。

以下の言葉をよく言っている、または思っているなら、怒りを感じる瞬間が多いかもしれません。
<あなたは怒りやすい!?怒りっぽい人が使いがちな言葉>
□普通(「普通こうだよね〜」など)
□当たり前(「これくらい社会人として当たり前」など)
□当然(「これくらい当然でしょ」など)
□常識(「こんなの常識じゃん!」など)

怒らない人を目指すのではない! 上手に怒りと付き合うのが最終目標


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――そもそも、怒ることは損でしょうか?

感情的に怒ることは、やってはいけない怒りの表現方法です。主には……

・人間関係に支障をきたす。関係性が悪くなり、人を傷つける。
・仕事上での信頼を失う可能性がある。
・自身の評価を下げ、不利益を生じる。
・冷静な判断ができなくなり、不利益を生じる。
・伝えたいことが正確に伝わらない。
・自律神経のバランスを崩し、健康にも悪影響。

こういったマイナスの働きを引き起こします。しかも、一度失った信頼を回復させるってすごく難しいんですよ。

――やはり怒りは良いことなしですね。先生のように穏やかになれたらいいのですが……。

いいえ! 私がおすすめしているアンガーマネジメントとは、決して怒らない人を目指すのではありません。怒る必要のないことは怒らないで済む、怒る必要のあることは上手に怒る、怒りと上手に付き合うための心理トレーニングなのです。

「あんなふうに怒らなきゃよかった」という一方で、「あのとき怒っておけばよかった」という思ったことがありませんか? 人に伝えるときも、怒りをもって訴えると真剣さが伝わったり、どきっと身に沁みたりすることもあるはずです。

怒りはときに原動力となり良い結果を生むことも。ですから、怒ったっていいのです。ただ、怒りに振り回されずに適切な表現をしましょう。

――アンガーマネジメント、早速やり方をお伺いしたいです!

3ステップでお伝えします。

【初級編 STEP1】衝動的な怒りをやり過ごす! 6秒トレーニング



人の理性が働くまでかかる時間は6秒。ですので、イラッとしたときに6秒間をやり過ごすトレーニングをしましょう! ここで大事なのが、6秒間耐えるのではなく、やり過ごすということ。違うところに意識を向ける方法としては、「今の怒りって何点?」と点数をつけるのがおすすめ。

「0点=穏やかな状態」、「10点=人生最大の震えるくらいの激しい怒り」だとして、「今の怒りは何点?」と数字で思い浮かべてください。

点数を付けていることに意識を向けている間は、物に当たったり暴言を言ってしまったりなど衝動的なことはできません。怒りを感じたら瞬間的に点数付けをする習慣ができるまで続けてみてください。

すると、「2点って大したことじゃないよね」「これは7点ものだな……」など、何に対してどの程度の怒りを感じるのか、客観的に把握できるようになります。

【中級編 STEP2】“べき”の許容範囲を広げる! 思考のトレーニング

画像のような、”べき”の三重丸を思い浮かべながらトライ!

画像のような、”べき”の三重丸を思い浮かべながらトライ!


怒る必要のあることないことを仕分けられる能力をつけましょう!

怒りを感じたとき、怒りの元になる”べき”において、以下の3つに何があてはまるか考えてください。
①許せるゾーン
②まぁ許せるゾーン
③許せないゾーン
例えば、パートナーが「家事をやって!」と押し付けてきたときに怒りが生じたとします。そのとき破られたのが、「家事を全て押し付けるべきではない」という自身の”べき”だとして、上の3つに当てはめてみましょう。
①許せるゾーン:家事を自分に押し付けることなく、相手が担当する。
②まぁ許せるゾーン:押し付けず、せめて休日や残業のないときなら家事をするなど譲歩案を聞いてくれ、話し合いができる状況である。
③許せないゾーン:自分が納得していないのに、家事を押し付けてくること。
②と③の間の境界線が、怒る必要のあること・ないことの境界線です。①、②の範囲内なら本来、怒る必要はありません。③に入る場合は怒る必要のあることです。

許容範囲が狭いとイライラしがちになるので、②を設けて、許容範囲を広げる努力をしましょう。

【上級編 STEP3】要望はため息じゃ伝わらない! 言葉でリクエストトレーニング

shutterstock

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家族でも阿吽の呼吸は通用しません。怒る必要のあることは、先ほど明確にした中級編の”べき”の三重丸をもとに、不機嫌な態度ではなく「こうしてほしい」というリクエストとして伝えましょう。

具体的には、「何を」「どのようにしてほしいか」「なぜ・何のために」を具体的に伝え、その際、「ちゃんと」「しっかり」「丁寧に」などの抽象的な言葉や「なんで?」「どうして?」という言葉で責めるのは避けてください。

対話の際は、必ず「未来はどうしていくか」を話し合うようにしてください。相手を傷つけたり、ギクシャクしたりしたいわけじゃないですよね。相手とこの先どんな関係を築いていきたいかを念頭に!

こんなときどうしたら? あるある怒りの対処法


Unsplash

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――思わず舌打ちしてしまうのをやめるには?

舌打ちって癖になりますよね。しかも相手には「機嫌が悪くなった」と思われるだけで自分の思いは1mmも伝わりません。そんなときこそ、6秒トレーニングを試してみてください。

――パートナーにもアンガーマネジメントを身につけてほしいのですが……。

アンガーマネジメントの対象はあくまで自分です。他人をコントロールすることはできませんから、「この人の怒り方は悩ましいな」と思ったら、ぜひ言葉で要望として伝えましょう。

――ついつい家族やパートナーには怒りやすくなってしまいます。

ずばり、身内には期待と甘えが高くなり、怒りが強くなる傾向があります。身近な対象ほど「近くにいるんだから言わなくてもわかる“べき”」「思う通りに動く“べき”」が発動します。

特にパートナー同士は、それぞれ生きてきた環境の違いから価値観が違うことが多々あります。自分が思う当たり前を相手に当てはめると、必要以上の怒りを抱えることになるでしょう。

悩みを相談してくださった方の中に、こんな方がいました。

「僕は歯磨き粉のアクアフレッシュが大好き。毎回絶対に、綺麗に3色出るようにしたい。けど、妻が真ん中からぶちゅっと出すので自分が使う時に歪んでいるのが許せない! 冷静にお願いしても直してくれない!」。

他人から見ると面白く思えますが、ご本人は本気です(笑)。このように、言葉でリクエストしても変えられないと見極めたことに対しては、どうしたらいいかの対策を考えましょう。

ストレスを溜めないためにシステムを変えるのもアリ。この方の場合は「妻と自分で歯磨き粉を分ける」という新システムを導入したほうがいいですね。

――年齢を重ねると、短気は治るものですか?

個人の性格にもよりますが、かえって頑固になる人もいるので、治るとはいえません。アンガーマネジメントを身につけておけば、「いろいろな価値観があるんだ」「思い通りにならないこともあるんだ」と、自身の許容範囲を広げることができます。そのほうがイライラもなく幸せな人生ですよね。


先生のもとでアンガーマネジメントを身につけた人の中で一番多い声は「生きやすくなった」「毎日が楽になった」というもの。家族や仕事でのコミュニケーションが円滑になり、無駄な怒りに振り回されないことの、なんとストレスフリーなことか! まずは6秒から、自分を怒りの衝動から解放するために試してみて欲しい。

アントレース、smile editors=取材・文

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