連載「イタリア人マッシのブオーノ・ニッポン!」とは…… 外国人はアイスコーヒーをあまり飲まない、とは耳にするが、そのワケはアイスコーヒーが日本で生まれたものだから。コーヒーといえばエスプレッソだというイタリア人のマッシさんもカルチャーショックを受けたという。
今回はエスプレッソとアイスコーヒーを掛け合わせたマッシ流アレンジもご紹介!
【写真10点】「エスプレッソとアイスコーヒーのスタバアレンジ」の詳細写真をチェック 案内人はこの方! マッシミリアーノ・スガイ●1983年生まれ、日本食が大好きなイタリア人フードライター。 KADOKAWAよりフードエッセイ『イタリア人マッシがぶっとんだ、日本の神グルメ』を出版。 日伊文化の違いの面白さ、日本食の魅力、食の美味しいアレンジなどをイタリア人の目線で発信中。
イタリアではカフェとはエスプレッソのこと
ひと口分より少なく、苦味を小さじ2〜3杯のたっぷりの砂糖で消して、熱いうちに一気に飲み込む。何のこと?って思うかもしれないけど、もしあなたがイタリア人か、イタリアが大好きな人ならきっと伝わるよね? イタリア文化のひとつである「エスプレッソ」のことだ。
注文したっけ? と思っているうちに現れる。今日は飲んだっけ? と思いながら2杯目、3杯目を無意識に注文してしまう。イタリアでは「カフェください」と注文すると、出てくるのはエスプレッソなのだ。
日本に移住するまでは気が付かなかったコーヒーのことを、ここで書くことにしよう。イタリアのコーヒー文化の歴史は長く、「深い」といいながらも実はコーヒーの種類は割と少ない。そして、日本に移住してからある日、突然人生が変わった。その理由は、「アイスコーヒー」の存在だった。
来日当初、初めてアイスコーヒーを見たとき、熱々のエスプレッソに氷を入れるなんて! と驚いた。量が数十倍に増えたことで、数秒で一気に飲むのではなく、時間をかけてゆっくりすすり飲むスタイルに変わる。
とんでもないカルチャーショックだ! といいながら、僕はあっという間にアイスコーヒーという飲み物の虜になってしまった。
正直言って、最後のエスプレッソをいつ飲んだのか思い出せない。イタリアでもアイスコーヒーが存在しないわけではないけど、日本とは一風変わった形になる。シェイカーを使い、カクテルのようになった「カフェシェケラート」になるんだ。頼むとしたら夏だけというのが一般的。しかも、夏でも毎日頼むわけでもない。存在しているけれど、特別な時だけ飲む。
もし、イタリアのバールで「どうしてもアイスコーヒーを飲みたい!」と強く言い続けたら、そのうち店員さんが面倒くさそうな顔をして出してくるのは、エスプレッソに氷を入れただけのものだろう。
イタリアにいた頃はスタバがまだなかったから、僕にとってのアイスコーヒーは日本のスタバである。
ドリップコーヒー、コールドブリュー、アメリカーノ、アイスカフェラテなど。日本ではなぜこんなにアイスコーヒーが進化しているんだろう? 日本といえばコーヒーのイメージがないのになぁと思いきや……調べたらまさかの現実が現れてきたのである。
アイスコーヒーもまた日本発祥のもの
アイスコーヒーはなんと……日本発祥だそうだ! 明治時代にコーヒーを冷やして飲み出したよう。冷蔵庫のない当時、コーヒーをガラス瓶に詰めて、井戸水に浸して冷やしていた。今はコーヒーを冷やして飲もう! なんて当たり前のことだけど、当時この発想を思いつくなんて、さすが日本人だと思う。
一方、コーヒーに氷を入れるのも、なかなか素晴らしい発想だと思わない? でも、当時はそうしなかったもうひとつの理由がある。氷ではなく、ビンにコーヒーを入れて、井戸水や氷につけて冷やす理由は、氷の影響でコーヒーが薄まるのを避けるためだったといわれているんだ。冷たいコーヒーの爽快感は、人々の生活に瞬く間に浸透して、大正時代には喫茶店のメニューに「冷やしコーヒー」が広がり始めたってわけだ。
とはいえ、やっぱり僕はアイスコーヒーには氷を入れてほしい。アイスコーヒーを頼んで氷が溶けているうちに、コーヒーの苦味が少しずつ薄くなるのではなく、優しい味に変わるからだ。暑いから頼むのではなく、目を閉じながら冷たい氷とコーヒーの苦味の隙間に隠れている涼しい夏を楽しめる。
コーヒーは一瞬の飲みものというより、時間が経てば経つほど進化を感じて、コーヒー豆は植物という生き物であることを再意識できる。忘れないでほしいのは、渡されたコーヒーは世界一の飲み物になるということ! 同じコーヒー豆で作られたといっても、その瞬間によって個性が変わるんだ。
ここからは特別に、読者の皆さんに僕の頭の中にある「アレンジワールド」へ案内しようと思う。日本発祥のアイスコーヒーとイタリアに欠かせないエスプレッソをより楽しめるアレンジを考えみた!
ちなみに、2つ目のアレンジは「騙されている」と思うかもしれないけど、もし勇気を出して試してくれれば「なんだこれ、最高だ!」になると思うよ?
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