自然災害は“想定外”のことが起きる
高橋さんは翌日から、いわき市の被災地を巡り、各メディアに被災状況を伝え続けた。そして現在、自身の経験を活かして全国で防災の啓蒙活動を行っている。
「災害が起きたとき、『まさか自分が死ぬわけない』という意識が働いてしまうんです。なぜなら“経験値”が邪魔をするから。『これまでは大丈夫だったから』と思っていると、予想以上のことが起こったときに逃げ遅れてしまう。
現在の防災対策も、これまでのいちばん大きな被害を基準に想定したもの。堤防もそう。過去いちばん高い津波から想定されて作られているから、“想定外”の津波には対応していないんです」。
第2波で水没した小名浜の街。
「私は本当に奇跡的に生き延びることができました。死の淵に立って初めて思い知った『あ、死んじゃう。もっと早く逃げていれば……』という後悔を絶対にしてほしくない。だからこそ、災害時は想定外のことが起きると思って行動することが大切なんです」。
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東日本大震災の当時、「想定外」という言葉を何度聞いただろうか。人間の想定・許容範囲を超えた領域を体験してしまった高橋さんが得た気付きは大きい。
次回は高橋さんが被災地を取材して見聞きした状況とともに、これらの経験から得た防災意識について話を伺いたい。
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