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ディテールへの緻密なこだわり

「リアルタイムではないのですが、やはり『アメリカン・ジゴロ』がジョルジオ アルマーニを知ったきっかけでした。あの映画でリチャード・ギアが着ているスーツが格好いいと聞き、観てみたらやっぱりいいなと。特にスーツを着て、オープンカーでハイウェイを走るシーンが大好きになりました。まだ20代でしたが、それからジャケットやスーツを毎シーズン、アルマーニで買わせてもらうようになったんです。以来30代になるまで、途切れることなく購入させてもらいました。

イタリアでプレイしていた時代はアルマーニさんとも懇意にさせていただき、毎シーズンのランウェイショーに招待されたり、ご自宅での食事会に招いていただくこともありました。ユニフォームを脱いだら毎日のようにアルマーニのスーツを着ていたので、僕にとってジョルジオ アルマーニの服は生活の一部といっても過言ではない存在だったのです」。

ジョルジオ アルマーニに魅了され、若いころからそのスーツに袖を通してきた三浦。スーツ歴はすでに30年以上になるが、長く着てきたからこそわかるようになったこともあるという。それはディテールへのこだわりであり、サッカーにも通じるそうだ。



「ずっとスーツを着てきて少しずつ分かるようになったのは、数センチ、数ミリ単位の差で見え方がまったく変わる服ということです。袖や丈の長さはもちろん、靴の高さが少し変わるだけでも違う服に見えることすらある。そんな服はスーツだけであり、その奥深さや面白さが年齢を重ねることでわかってきたように思います。アルマーニさんはその奥深い世界をずっと探求されてこられたのでしょう。

そんな数センチ単位のこだわりは、実はサッカーにもあります。普通に観戦しているだけではなかなかわからないと思うのですが、サッカーは数センチ単位、数秒単位で11人が連動し合い、緻密に動いているスポーツです。あれだけ広いフィールドのなかで小さなボールを奪い合い、ゴールに向かっていくのですが、ほとんど得点に結びつきません。90分走り続けても1点入ればいいほうであり、ひとりがボールに絡む時間は1分にも満たない。サッカーは人生と同じで失敗が多く、いわばコスパが悪いスポーツなのです。だからこそがむしゃらに走るだけでなく、全員が連動した緻密な動きが大切になってくる。オフェンスはどちらかというとその場の感性や発想などのクリエイティブが問われるのですが、ディフェンスに関しては、後方からの声かけで前方を動かすなど、かなり細かい動きをチーム全体でしています。そしてそれができるチームが強いのです」。
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