渡辺真史●1971年、東京都生まれ。ベドウィン & ザ ハートブレイカーズのディレクター。ローカルとインターナショナル、2つの視点で東京をクルージング。
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すべての写真を見る 原宿は隠田商店街。いわゆるキャットストリートに位置する「ステーキてっぺい HARAJUKU」で、店主の小椋亨さんと卓を囲む。
渡辺 以前あった「ステーキてっぺい 神泉店」は、訓ちゃん(野村訓市)と一緒に夜な夜な通いました。でも、原宿店の存在を知ったのはわりと最近。小椋さんと再会できてびっくり。
小椋 私も驚きです。当時お話しすることはなかったですが、渡辺さんのお顔ははっきり覚えていました。
渡辺 僕も、なぜか小椋さんのことを忘れられなかった(笑)。そして、“てっぺい”の味も。神泉の店が閉まって以降、別の店舗で食べてもなぜかしっくりこなかった。ハワイ店も六本木店も、おいしいのは間違いないのですが……。
先日、来日したグラフィティアーティストのスタッシュからのリクエストでこちらの原宿店に伺いました。一緒にお邪魔したメンバーの顔触れや空気感もあるかもしれないけれど、あの頃と同じ味がしたんです。
小椋 ありがとうございます!
渡辺 柔らかいお肉にたっぷりのソースをかけて、大盛りのご飯と一緒にガツンといく。ちなみに僕はバター醤油かにんにくソース派で、とにかくその満足感は格別です。ただ、さらにスゴいのが、特製のドレッシングで食べる前菜のキャベツ。
小椋 それ目当てのお客さんもいるくらい、好評をいただいています。
渡辺 もはやシグネチャーですよね。にんにくが効いていて、中毒性たっぷりのウマさ(笑)。好きすぎて自作にトライする友達もいましたが、ことごとくうまくいかないようです。
小椋 ドレッシングのレシピは、神泉の頃から秘密主義が貫かれています。当時、唯一作り方を知る店長は、スタッフが帰ってから仕込んでいた。だから僕らは使用した材料の破片をゴミ箱から探して作り方を想像し、試行錯誤の繰り返し。そのくらい徹底して、味を守っているんです。
渡辺 だからこそ、食べた人の記憶にも強く残るのでしょう。
小椋 大切なのはやはり、愛の強さですよ(笑)。
渡辺 確かに、作る側も食べる側も、愛は重要かもしれない。今日の料理も、やっぱり最高。ほかに、店を続けるうえで大事にしていることは?
小椋 飲食店にとって大切なことは、変わらないこと。でも一方で、ブラッシュアップも必要なんです。“変えちゃいけない”と“変えなきゃいけない”。その両方を、しっかり理解しないといけません。
渡辺 なるほど。変わらない“てっぺい”をベースに、原宿の味に進化する。ますます期待しています!
——口内で、脳内で蘇ってくる“てっぺい”の味。ヤミツキ確定だ。 OCEANS9月号「夏の街角パパラッチ」から抜粋。さらに読むなら本誌をチェック!