動物環境保護もエンタメ、コミュニティの一部に
アメリカの国立公園を旅してきて、僕が素晴らしいと思ったのが、安全にアウトドアアクティビティを楽しむための仕組みやルール、生態系を崩さないための取組みの徹底ぶりです。
観光客・訪問者のためのビジターセンターが設置されていて、まずはここを訪れて、園内の地形や気候、ルールや野生動物との接触時の注意事項といった基本的な情報・知識を得ます。そしてレンジャーとコミュニケーションを取り、自分のやりたいことを伝えて、それに応じたフィールドの状態を知ってから公園に出ます。
行なっている保護活動についても、過去から現在にかけての改善状況などまで、しっかり学ぶ機会が提供されていました。
動物園や水族館でも、動物環境保護に関する訴えかけが非常に多いです。
動物の紹介のみならず、野生で置かれている現状やいかにして守っていくかといったことについて、楽しみながら自分ごととして考えてもらえる展示がなされていました。
例えば、シアトルにある長い歴史・人気を誇るウッドランドパーク動物園のオオカミの展示の前でそうした内容の大きな看板を見ましたし、前述のモントレーベイ水族館でも、海洋プラスチックに関する大きな展示コーナーを設けていたり、お寿司のネタを絶滅危惧の度合いによって赤・黄・青の3段階にリスト分けした表を目玉展示の前やショーの後に配ったりと、興味を引く工夫が施されていました。
ウッドランドパーク動物園(シアトル)
モントレーベイ水族館(カリフォルニア州モントレー・キャナリーロウ)
ボランティアの皆さんが大いに活躍されていたのも印象的でした。
来園客へのレクチャーや動物たちがゲストから見える場所にいるかのチェックなど、動物に直に接する業務以外の様々な仕事を担われていて、数も正規の職員より多いくらいでした。
動物についてボランティアが学ぶための学校のような建物が園内にあったり、長年の功績をたたえる表彰システムもありました。皆さんのおかげで動物たちの魅力が一段と伝わっていました。
このように、市民や観光客が動物たちと日常的に親しみ、環境や生態系の保護について考え広めていくための仕組みやコミュニティが形成されていて、文化の一つと感じるほどのものでした。
日本でもこういった場がどんどん増えていくことを願いつつ幕を閉じた、約7カ月間のアラスカ・カナダ・アメリカ西海岸の旅でした。
次回は
メキシコ編をお届けします。ぜひご覧ください!
武藤大輔◎1995年東京都生まれ。大学在学中に主に海洋生物について学び、沖縄県西表島にて環境省と共にカンムリワシの繁殖研究を1年間住み込みで実施。島生活の中で命の力強さや自然の美しさに多く触れ、生物関係の仕事を目指して2017年に株式会社アワーズ(アドベンチャーワールド)に入社し、2018年よりイルカ飼育スタッフとして業務に従事。2019年にはヤングダボス会議とも呼ばれる、地球規模の課題解決に向けて次世代リーダーが集う国際サミット「one young world 2019 in London」に日本代表として参加し、海洋プラスチック問題などについてディスカッションを行ない、帰国後も動物たちを通して課題解決に向けた行動変容を促せるようなプロジェクトを多数実施。2023年5月にアワーズを退職し、同月より「地球が創る自然を体感すること」「人が創る文化を体感すること」をコンセプトに自転車で世界一周を行う「Cycle Earth 〜World Bicycle Journey」をスタート。現在アラスカからパナマまでの走行を終え一時帰国中。2024年8月20日までアドベンチャーワールドで「地球を旅する写真展~Take Your New Adventure~」を開催(休園日を除く)