品質へのこだわりはもちろん、価格のバランスもユーザー想い
この日、トビアスさんが紹介してくれたモデルはワイルド ワン。以前、兄のベン氏が紹介してくれた人気のスポーツウォッチの新作だ。
オリジナルのカーボン複合素材を駆使しているので仕上がりが軽量かつ頑強、加えて素材自体のフレキシビリティが高いので割れにくい。
「耐衝撃性に優れているので、ウィンブルドンやフレンチオープンで活躍するテニスプレーヤーが、実際に使用する予定です。この時計はパートナーファクトリーと共同で開発し、品質と価格のバランスを追求しています。
1億円の時計に匹敵する優れた品質を持ちながら、価格はその100分の1で提供しています。このようなプライスを実現することはとても困難なことですが、ひとえに社員や職人による物作りへの熱意の賜物であると思っています」。
ノルケインは、家族の価値観を仕事に反映させ、社員や職人はもちろん、顧客もファミリーの一員として迎え入れることで、一体感を持ってブランドを成長させている。
なかでも日本のユーザーの熱量は、世界屈指であるという。今回は2回目の訪日だが、早くもエネルギーの強さを実感しているという。
「日本の皆さんに対しては、感動の想いしかありません。とにかく時計に対する造詣が深く、我々の物作りに対する姿勢やブランドの精神性を理解してくれていて、すごくありがたいです。
今回ユーザーの皆さんにイベント会場で実際にお会いし、コミュニケーションをとれたことが本当にうれしかったです。特にイベントではユーザーの皆さんとの一体感を感じることができ、その情熱を共有することが喜びとなっています。
ユーザーとの距離感が近いことがブランドの強みのひとつなので、これからも日本での活動を続け、絆を深めていきたいです」。
今後の目標についてたずねると、「チャレンジすることです」と即答。まさにトビアスさんが大事にしている言葉だ。
「革新と成長を続けることで、機械式時計の素晴らしさを多くの人に伝え続けることです。50万〜100万円の価格帯で、最高の品質を持つインディペンデントブランドとして成長を続けたいと考えています。
そしてブランドの成長とともに、機械式時計業界全体の発展にも寄与していけたらうれしいですね」。
インタビュー終了後の撮影の合間に、もし1日が2時間増えて26時間になったとしたら何がしたいか聞いた。
ちなみに以前、兄のベンさんにも同じ質問をしたが、そのときの答えは、「仲間と一緒にブレスト(ブレインストーミング)をします」。いかにも企業のリーダーといった面持ちだった。
トビアスさんは「家族と一緒に過ごします」とにっこり。兄弟どちらも有能なビジネスパーソンであり、良きパパであることは同じだが、雑談の中から別々の人間性が垣間見えて、なぜかとても興味深かった。
トビアス・カッファーの10問10答
Q1. 初夏の思い出は?
プール。
Q2. コンビニで思わず買ってしまうモノは?
ミント系のお菓子。
Q3. 健康のために摂取しているモノは?
日本食、特に神戸ビーフ。
Q4. 直らないクセは?
喫煙。
Q5. スイスに帰って最初に食べたいモノは?
空港のサンドイッチ。
Q6. 子供の頃の夢は?
プロサッカー選手。
Q7. 似ていると言われたことのある有名人は?
ブラッドリー・クーパー。
Q8. 疲れを取るためにしていることは?
睡眠(5時間くらい)。
Q9. ふたりの娘さんへのお土産は?
浴衣。
Q10. 1日が2時間減ったら何をやめる?
入浴。
ノルケイン 副社長 トビアス・カッファー●1990年、スイス・ビエンヌ出身。2013年からルイ・エラールで時計業界のキャリアをスタート。その後いくつかのブランドを渡り歩き、おもにセールス部門にて経験を積む。21年5月より現職に就任。実父は、時計製造会社を経営するマーク・カッファー氏。