「SEAWARD TRIP」とは……▶︎
すべての写真を見る 自然の生態系を、固有植物が茂るといったもともとの姿に戻す環境活動“レストレーション”。
ハワイ・オアフ島のダイヤモンドヘッドでこの活動を行う日本人サーファーがいる。
なぜハワイでレストレーションを行うのか。いわゆる“環境保全”とはどう違うのか。詳しく伺った。
ひとりの日本人が始めたハワイの環境整備活動
あれ、こんなに視界が開けた場所だったかな?
眼前には色鮮やかな青い海が広がり、沖から入ってくるうねりが岸の近くでブレイクする様子や、その波にテイクオフしていくサーファーの姿が、とても鮮明に目に入ってくる。
足元には天然のグリーンカーペットが敷かれ、すぐ近くをサーフボードを持ったローカルサーファーが裸足で歩いていく。少し離れたところには、芝生に腰を下ろして会話に興じる2人組の女性の姿もあった。
たとえストレスを抱えていても、ここにいる間だけは忘れられる。久しぶりに立ち寄ったところは、そう思えるピースフルな雰囲気に満ちていた。
場所はクイレイクリフスビーチパーク。ワイキキからも近いハワイの象徴的なランドマーク、ダイヤモンドヘッドにある公園だ。
以前に訪れたのはコロナ禍の前。目的はサーフィンで、うっそうとした木々の中を崖下のビーチへ降りていった記憶がある。ワイキキのほうを見ると、前回は存在に気付かなかった灯台があった。
それは1917年に建てられたダイヤモンドヘッド灯台。安全な航行を守るため今も現役で稼働する、100年を超えてその場に鎮座する船の守り神だ。
見えなかったものが見えるほどに整備されている。ホノルル市が、ハワイ州が、人々に快適な空間と時間を提供するため行ったのかと思ったが、様子は違うらしい。
整備を始めたのはひとりのサーファー。しかも日本人だというから興味深い。
「最初は“いつもサーフィンする大切な場所だからきれいにしよう”というカジュアルな気持ちだったんです。2014年頃ですかね。海上がりにゴミを拾ったり、仲間たちとビーチクリーンをしたり。
日本にいたときも、よく行く千葉の鴨川などでビーチクリーンに参加していましたし。大きなことをしようというスタンスではありませんでした」。
きっかけはサーファーらしい姿勢にあったと話すのは久保田亮さん。クイレイクリフスビーチパークの整備を行った中心人物だ。
そこから環境活動に取り組んでいくことに。スケールが拡大した背景には他団体の環境活動への参加があった。
「15年ほど前にノースショアを拠点にするNPO団体ノースショア・コミュニティ・ランド・トラストの活動に参加したんです。彼らは地域の美しい景観の保護と復元を行っていて、昔の海岸線に見られた光景を取り戻すことをコンセプトとしています。
植物なら外来種を取り除いて固有種に植え替えるということをコツコツと行っているんですが、正直なところ、参加した当初は“これはさすがに無理でしょう”と思いました。こんなことをして意味があるのかな、と。
でも、半年に1回くらいのペースで参加していたら、どんどん景色が変わっていくのがわかったんです。ついには“ハワイの昔の海岸線には、このような植物が自生していたんだな”という深い感慨にも浸れて。
今ではアルバトロスが飛来して卵を産むほどに自然は復元されていますから。やればできるんだと、強い影響を受けました」。
自分の住まいはタウンのマノアにある。だからノースショアで見た活動をダイヤモンドヘッドでやってみよう。そう思うことで久保田さんの活動は進化していった。
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