実はツッコミ待ち? 俳句が楽しくなる新たな視座
編集部 岩田さんのおかげで、俳句のハードルがぐんと下がりました。
岩田さん 俳句ってお笑いでいう「ボケ」なんですよ。世の中ではどちらかといえばツッコミだと思われることが多いんですけど、実はそうじゃないので。
編集部 どういうことですか(笑)?
岩田さん 俳句を読むと、すごくいいことや正しいことを言っているように感じるかもしれませんが、「何を言っているんですか?」とツッコミを入れたくなるものも、たくさんあるんですよ。例えば、阿部青鞋の代表的なこの句。
岩田さん いやいや違いますよって。あとは高浜虚子のこの句なんかもそうですね。
岩田さん 何言ってんですか? とツッコミを入れたくなりますよね。そういう反応がまずは正しいと思うんです。
当然、作句意図はありますが、そのまま大真面目に読もうとしてしまうと、よくわからなかった俳句がさらにわからないものになってしまう。だったら、俳句=高尚なものという先入観をとっぱらった方が、俳句との距離を縮めることができる気がします。みなさんからよく「私の教養がなくて申し訳ない」と言われるんですが、そんなことは決してありません。
編集部 ちなみに岩田さんの俳句で、そうやってツッコミを入れて読んでいいものはありますか?
岩田さん ありますよ。例えばこの2句。
落椿の気持で踏めよ踏むからは
靴篦の大きな力春の山
岩田さん 1つ目の句は、地面に落ちた椿をなんで椿自身の気持ちになって踏まないといけないんですか?って思っていいんです。そして2つ目の句は、大きな力と言っている靴べらは本来小さいものですし、そこになぜ春の山があるのかも説明されない。だから、原始的なツッコミ方としては、「なんでやねん!」でいいと思います。
岩田さんが教えてくれた2つの句は、句集『膚(はだえ)』(ふらんす堂)に掲載されている
編集部 とても新しい俳句の読み方を知れて楽しいです。では最後に聞かせてください。これから先、俳句はどうなると思いますか?
岩田さん 爆発的に普及すると思います(笑)。というのは、今のような消費社会にみんな飽きはじめていて、生産をしたくなってきているんじゃないかと。
あと、ちょっと変なこと言いたい欲ってあると思うんですよね。現代社会では正しさばかりを求められるので、それこそボケたくなるというか。自分の俳句が読まれることはSNSの「いいね」とは少し違いますが、やっぱり似ている良さもありますね。
長いコンテンツが見られなくなっている今、生産性があって短くて謎の多い俳句は、今の社会やそこに生きる人たちとの相性がいい。だから、これから俳句はどんどん広がっていくと思います。