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すべての写真を見る 己を語る名刺代わりの存在とも称される腕時計の選び方。
何に重きを置くか、その価値観・判断基準は人それぞれだが、思い切った買い物である以上、「損しない」スマートな選択であってほしい。そう考えるのは誰しも共通なはず。
資産価値としての「損or得」という短絡的な解釈ではなく、もっと幅広く柔軟な視座から“損しない時計”とは何かを考察してみた。
| 朝日新聞 編集委員(文化、メディア、ファッション担当) 後藤洋平さん(48歳) 朝日新聞社にて、2014年から腕時計やファッションの記事を担当。スイスの時計展示会やファッションウィークなどの現地取材も手掛ける。以来、時計沼にハマっているそう。 |
| ホディンキー・ジャパン編集長 兼 リシェス デジタル編集長 関口 優さん(40歳) 時計専門誌編集長を経て、2019年よりワールドワイドの時計メディア「ホディンキー・ジャパン」編集長に。約15年の時計取材キャリアを通じて、幅広い時計知識を持つ。 |
ジャーナリストの目線で考察する“損しない時計”
——いきなり結論ですが、ジャーナリストであり、いち時計好きでもあるふたりから見て、ずばり“損しない時計”ってどういうものですか? 後藤 損しかないですよ(笑)。
関口 我々は売らないですからね。世間でいう資産価値としての含み益を享受できないんです(笑)。
後藤 というのは冗談ですが、腕時計を持つこと自体にまず、いろいろな価値があると思います。
関口 同感です。我々はジャーナリストとして時計の歴史やスイスで生まれた背景を知るんですが、それが楽しい。好奇心を刺激する装置です。
「最近はもっぱらカルティエに夢中です!」(関口)。虜となるカルティエは、右から「タンク ノルマル」、限定モデルの「タンク サントレ」、名キャリバーが入る「サントス デュモン」。左のロマン ジェロームは結婚記念で購入。タイタニック号の船体を混入したケースに惹かれた。
後藤 学生時代は、あんなに歴史が頭に入らなかったのに不思議(笑)。
関口 知れば知るほど興味が湧いて、その世界に引き込まれますね。
「趣味から交友が広がり、ライフワークに」(後藤)。20本超所有する機械式時計から厳選の3本を持参。右から「オメガシーマスター300」の60年モデル、71年の「ロレックスデイデイト」、「パルミジャーニ・フルリエ トンダPF GMT」。時計は銀行の貸金庫に預けて管理しているという。
後藤 僕は時計界ではまだ若輩なので、関口さんほか、多くの先輩を師と仰いでいます。
関口 そういうなかで生まれるコミュニティ意識も、時計の世界にコミットする醍醐味でしょうね。
後藤 また、いわゆる“記念買い”は、人生の節目を彩ることもできます。
関口 安くない時計を購入する言い訳にも使えます(笑)。
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