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カレーを通じて自分を知ってほしい

2024年も年明けから、1月は歌舞伎座、2月は大阪松竹座、3月は京都南座、4、5月は歌舞伎座、6月は博多座と歌舞伎の舞台が続く。

その合間を縫って、他の仕事のため、新幹線で地方と東京を往復することもある。「新幹線ばかり乗っている」と本人は苦笑するが、それほど多忙でも、バラエティ番組でカレー屋をハシゴするのもまったく苦ではないという。

「舞台の前に、カレー屋を3店舗まわるロケがあったんです。『後がありますから一口ずつでいいです』と言われましたけど、せっかくだし、全部完食しました。そのときは運動量の多い舞台だったので、たくさん食べて、たくさん動いて、むしろ健康でしかいない」と、どこまでも前向きだ。

(撮影:今井康一、スタイリスト:三島和也(tatanca)、ヘア&メイク:STORM(Linx))

(撮影:今井康一、スタイリスト:三島和也(tatanca)、ヘア&メイク:STORM(Linx))


「僕の場合は、カレーを通じて自分を知ってほしいというのもある。歌舞伎は敷居が高い、観るきっかけがないとよく聞きますが、観劇するきっかけは何でもありだと思うんです」

マルチな活躍を見るにつけ、どれだけストイックなんだろうと思ってしまうが、「寝る時間を削ったり、ボーッとする時間がないのは耐えられない。平均8時間は寝てますし。

時間には限りがあるから、短縮できるところは短縮して、ボーッとできる時間も確保したいというのが根底にはある」という。

「僕の仕事は、感情を使う仕事。舞台表現をずっと考えて、ずっと稽古をしていても、寝不足になったり、ニュートラルではない状態になってしまって、うまく表現できなければ、結局本末転倒になってしまう。

自分の感情やコンディションがニュートラルな状態ではじめて、表現のときに必要な余力が生まれる」

そのためには、芝居に直結していない、一見無駄に見える時間も必要不可欠なのだ。

「同じ歌舞伎俳優さんでも、素顔に近いような感じで演技したい人もいれば、完全に自分を消し去って作り込みたい人もいる。

例えば、女形でも、日常の人間らしさみたいなものをそのまま持ち込む人もいるし、”女形”という別の生き物に完全に変身する人もいる。アプローチの仕方は人それぞれ。

だから取り繕ったところで、僕はやっぱり”こぼれてしまう”タイプだと思う。『さっきカレー食べたんだろうな』って見えてしまうし、それでいいと思っています。

でも、これだけは絶対ミスできないぞというときの緊張感は、誰にも負けないというのはほしい。めちゃくちゃ緊張感も持っているけど、同じくらい隙もある、みたいな」


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