思考と感性を駆使し海面下の魚と対峙する
グローブライド 西垣哲哉さん●1969年、神奈川県生まれ。5歳のときに神奈川県の丹沢で釣り初体験。ニジマスを釣り上げ、釣りの魅力にハマる。大学卒業後には釣り具の総合ブランド「ダイワ」を擁する企業のグローブライドへ。現在はフィッシング営業本部に勤務し、D.Y.F.C事業などを統括する。また歴史の長いD.Y.F.Cは多くのOBがおり同社の鈴木一成社長もそのひとり。クラブの会員は随時募集中だ。
4月、長崎県佐世保市に向かった理由は、大型海洋釣り堀「ジャンボフィッシング村」でD.Y.F.Cが催すフィッシングスクールへ参加するためだった。
D.Y.F.Cは小学生から中学生までが入会できる釣りクラブ。主催者は釣り具の総合ブランド「ダイワ」である。
クラブの歴史は1976年発足と古い。「全国の子供たちに釣りの楽しさを知ってもらおう」をコンセプトに、当時は年4回の会員誌発行を主な活動とした。
本格的にスクールを始めたのは2005年。“直接的な触れ合い”をクラブのコンセプトにプラスする形でスタートした。
「今年は25〜30回のスクールを全国各地で行う予定です。毎回2〜3人の子供たちにひとりのプロアングラーがコーチとして付き添いながら釣り体験を楽しんでもらっています」と説明してくれたのは西垣哲哉さん。
「ダイワ」を擁するグローブライド社のフィッシング営業本部でスクールを統括する人物だ。
またこのときは海洋釣り堀が舞台となったが、東京湾などで沖合に出て行ったり、海釣り施設で開催することもあるという。そしていずれの場合でも今回と同じく、“自分で釣った”“自分でできた”という体験を得て帰ってもらうことに留意してスタッフは子供たちを手厚くサポートするのだ。
「釣り上げたときの何ともいえない高揚感が釣りの魅力です。私も5歳のとき、親と一緒に行った川でニジマスを釣ったことが今につながる原体験。以降、川、海、湖とフィールドを広げ、狙う魚や手にする道具のバリエーションも増えていきました。
どんどんハマっていって、おかげで昔も今も、休みになれば全国のどこかの水辺で糸を垂らしている釣り好きになりました(笑)」。
釣り場に立って、狙う魚の様子を想像するだけで楽しいのだという。水面下で魚はどのように泳いでいるのか、お腹は空いているのか、何を食べたいのか。
さらに潮の干満、風向きなどの自然条件を鑑み、思考と工夫を凝らしてベストな仕掛けをセット。魚がいるであろう場所を狙いキャスティングする。
「自然と向き合えると釣り人としてステージがひとつ上がります。人と同じく魚も自然。釣り場も自然環境の中にあります。
風が吹けば雨も降る。目の前の状況は刻々と変わり、その変化を感じながら釣り人は魚のことを考え、答えを出すのです。魚がヒットするのは、その答えが合ったとき。釣果は思考と感性を駆使した先にある賜物なのです」。
つまり釣りとは、都市生活では得がたい自然体験であり、認知能力と非認知能力のどちらも育むもの、ということだ。
西垣さんは「最近の傾向として、“自身に体験はないけれど子供にさせてみたい”という30〜40代の保護者による問い合わせや入会が増えています」と言うが、思えば近年の子を持つ親は非認知能力の重要性を説われてきた。
自己肯定感や意欲、やり抜く力、社会的能力などの力を伸ばすことが、これからの時代を生きる子供たちには重要だというものである。
そして西垣さんによれば、そのいずれもが釣りによって育めるものだという。楽しく未来を生き抜く力を培ってほしいと願う親がD.Y.F.Cの門を叩いているのだとしても、決しておかしくはないのだ。
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