人間に近づくパラサイト、パラサイト化する人間
ミギーと共存する羽目になった新一は、他のパラサイトたちとの戦いを経て、平凡な高校生からどんどん変わっていきます。傷を治癒するため、ミギーの細胞を大量に取り込んだ影響もデカかったんでしょうね。
特に、母親に寄生したパラサイトと対峙する描写はエグかったし、マジで可哀想でした。あのあたりから新一の凄みが一気に増していったんじゃないかと思います。
特にその変化がわかりやすかったのは第18話「人間」。車に轢かれた子犬を新一が保護するんだけど、死んだ途端にゴミ箱に捨てようとしたシーンがあるじゃないですか。
それを見たヒロインが驚いて「子イヌがかわいそうだ!」って言うんだけど、新一は「死んだイヌはイヌじゃない イヌの形をした肉だ」って返すんです。相当ヤバいですよね(笑)。
昔の新一なら言わなかったこのセリフに、ミギーも驚いてました。「イヌの形をした肉なんてセリフ……むしろ私が使いそうな表現だ」って。半分人間、半分パラサイトになった彼の心の葛藤がどんどん出てくるのも見どころですね。
逆に、人間らしさを持ち始めるパラサイトもいるじゃないですか。教師の田宮良子。田宮がいなかったら『寄生獣』はここまで面白くなかったと思うくらいの重要人物です。
田宮もパラサイトに寄生された側なんだけど、同じくパラサイトに寄生された人間との間にできた子を宿し、産むんです。だけどパラサイトだから愛情はなく、まるで実験とか飼育の感覚で育てるんですよ。赤ちゃんが泣いたら真顔で「黙れ」って言って黙らせるし(笑)。
でも田宮は最後、自分の子供を守って死ぬんです。パラサイトとして絶対にやらなさそうなことをやって死んでいく。人間とは何か、パラサイトとは何かを追究するようになっていた田宮は、気づいたらいちばん人間に近い存在になってたんですよ。
3/4