カブトムシにしがみつかれて激痛を感じた瞬間です。
自分でも覚えていないのですが、物心つく前からどうやら生物が好きだったそうです。両親が言うには、まだ歩く前から昆虫に興味を示していたらしい。僕自身に記憶があるのは、3歳くらいの頃のこと。両親がカブトムシやクワガタムシを捕まえに、森へ連れていってくれました。
はじめてカブトムシを捕まえた時、指にとげのある足でしがみつかれてとても痛かったのを覚えています。しかし恐怖を覚えるより先に「こんなに力が強いんだ」と感動しました。そしてそのまま捕まえたカブトムシ、クワガタムシをペットにしたんです。
こんなすごい生物を、これからはいつでも自分の家で見られることに幸せを感じました。それから毎日どうやって餌を食べるのか、どんなふうに喧嘩をするのか観察することが日課に。生物が好きという気持ちがますます大きくなっていきました。
Q.今「ときめき」を感じる生物と、その理由を教えてください。
危険な生物や深海生物にときめいています。
歯が鋭かったり、毒があったり、一般的に危ないと言われている危険生物に惹かれます。そういう特性は、僕にとってはすごくかっこいいものなんです。子どもは怪獣が好きですよね。怪獣は牙が生えていて強い、電気を出して攻撃するなどの特殊能力を持っている。恐怖さえ感じるからこそかっこよく見える。その感覚に近いと思います。
危険生物のグンタイアリ。働きアリと比べると数倍の大きさで、湾曲した大きなアゴが特徴。平坂さんはそれら身体構造の謎にときめき、その謎を解き明かしたいという思いから、実際に咬まれてみたり、毒針に刺されてみたりしたという。
他にも好きなのは、深海生物。僕らは光がある世界に暮らしていますが、深海に住む生物は光の届かない真っ暗な環境で暮らしています。そのせいか深海魚は見た目が面白いんです。異様に口が大きいものや、体が真っ黒なもの、体から光を出すもの。想像もしなかったような生物が住んでいるのが深海です。深海には、まだまだ知らない新種が残っていて一番ロマンがある場所でもあります。
新種の深海魚、キホシサザレヒメコダイ。平坂さんがはじめて発見し採集した。
今2つの例を挙げましたが、あらゆる生物にときめく要素があります。その理由のひとつは、生物の体が合理的にできていること。その辺に茂っている葉っぱでも、ちゃんと目を凝らしてみるとその環境に適応した形になっていることがわかります。とても細長い魚や派手な虫など変わった姿をした生物を見つけた時に、なぜこんな形や色になったのかと理由を考えることがすごく好きなんです。
どんな生物も理にかなった形をしているので、自分なりに理由を推測しその答え合わせができた時に喜びを感じるんです。ただし生物多様性が極めて高い熱帯地方に生息する生物の中には、合理性では説明のつかない姿のものもいます。そういう説明のできない謎が残っているところも面白いんです。
北アメリカ大陸最大の淡水魚、アリゲーターガ―。人を襲うという噂のあるアリゲーターガーがひしめく川を毎日泳いだ平坂さん曰く、「危険生物扱いされているがそんなに危険じゃないと思う」。
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