③ケララのおふくろの味を堪能できる「サウスパーク浅草」
都内の南インド料理店と言えば、先に挙げた「ケララの風モーニング」と「ケララバワン」の二強だったのですが、そこに彗星の如く現れたのがこのお店。
「サウスパーク」はとにかくマニアック!
店前に置かれたカレーリーフの苗。
2016年、外国人観光客が集う浅草にオープンしたこともあり、「ここはケララですか?」と錯覚するぐらい日本離れした店です。
レギュラーメニューからして、日本人が聞いたことも見たこともない料理がずらり。特に「ミーンポリチャトゥ」は、僕がケララを旅したときにも見かけた、現地では馴染み深い料理です。
バックウォーターツアーが人気を博すほど川に恵まれた地なので、川魚をよく食べるんです。スパイスでものすごく濃く味付けして臭みを消し、ちょっと酸味も効かせて、バナナの葉で包み焼きにしたのがこちら。
ケララの名物料理「ミーンポリチャトゥ」。現地ではケララ固有の魚「カリミーン」を使うが、日本では手に入らないので、この店では「メルルーサ」で代用。
現地の食文化をリアルに体感することができます。
「プットゥ」という蒸しケーキもここでしか食べられない逸品でしょう。
「牛肉のプットゥ」。海を隔てた近隣国スリランカにも同じ料理がありますが、 国際的な港町コーチンを擁するケララでは、ヒンドゥーだけではなく、キリスト教やムスリ ムなどが共存しているため、牛肉料理も提供される。
竹筒からにゅ〜っと押し出して食べるもので、めちゃくちゃ美味しい! 米粉とココナッツでできた生地で、中には牛肉などが入っています。
ケララは多様な文化が交じり合い、互いを寛容に認め合ってきた土地なので、牛を食べるイスラム教徒、豚を食べるキリスト教徒や仏教徒が平和に肩を並べているんです。
食材ひとつとっても、ケララの多様性が結実しているのがわかります。
ほかにも、「アッパム」というごく薄焼きのパンケーキもスナックに最適です。端っこはパリッと、真ん中はフワッと焼き上げるのは至難の業で、小さなフライパンで見事に仕上げてくれます。
ここは異国料理のレストランにしては珍しく、シェフのほとんどが女性。まさしく「ケララのお母さんの味」を体現している店といえます。
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いかがだったでしょうか?
日本で南インド料理を広めたパイオニアの店「ケララの風モーニング」に始まり、インド人と日本人のご夫妻で地域に根差した店に育て上げた「ケララバワン」、そして国際化が進む浅草でグローバルなレストランとして注目を集める「サウスパーク浅草」……3店を巡る旅路は、日本とケララの歴史を紐解く軌跡でもあります。
自然との調和や食べものと健康の分かちがたい結びつき、サステイナブルな在り方など、現代社会が失いかけているものを、ケララの食は教えてくれます。
「ケララの風モーニング」に貼られていたケララ州の地図。大航海時代に思いをはせながら、ケララ料理を味わえる。
大きな「原点」、ふるさとに導いてくれるような温かい料理を、ぜひこちらの3店で、そしていつかケララその地で味わってみてください。
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