連載コラム「カレー人類学」●異文化が交わる場所にカレーあり。カレーを掘ることは、異文化を知ること、すなわち文化人類学だ。4000軒以上にもおよぶ世界中のカレーを食べ歩いたカレー細胞が、食欲も知的好奇心も満たされるカレーの旅へと誘う。
老若男女問わず愛されるメニュー「カレー」。
カレー細胞さんも、そんなカレーの魅力に取りつかれたひとり。日本全国、時には海外まで出掛けて各地のカレーを食べ尽くしている。
彼曰く、全国でも長野県松本市は激アツのカレーシティだという。
現在松本市では、
「松本カリーラリー」が開催中で(~3月31日まで)、地元の飲食店約80軒が個性溢れるカレーを提供している。
▶︎すべての写真を見る なかでも「この味は、世界に通用する」とカレー細胞さんの舌を唸らせた4軒をピックアップした。
案内人はこの方! カレー細胞●カレーキュレーター。日本全国はもちろん、アジア・アフリカ・南米に至るまで、4000軒以上のカレー店を渡り歩いてきた。カレーカルチャーの振興に向けた活動を精力的に行っている。雑誌やWeb連載のほか、「マツコの知らない世界」(TBS)などTV出演多数。映像クリエイターとしての顔も持つ。
「カレーこそ、素晴らしきジャパニーズフードである!」
私がカレーにかける思いを、連載第1回の冒頭にお伝えします。
近年、“日本のカレー”は世界から熱い視線を集めています。2023年には、体験型旅行サイト「TasteAtlas」における「Best Traditional Food in the World(世界最高の伝統料理)」ランキングでなんと日本のカレーが1位を獲得。
同年、農林水産省はカレーを輸出重点品目に認定しました。言わば国のお墨付きです。
TasteAtlas公式Xより。
それにも関わらず、当の日本人は「安い大衆食」「本場はインドだから……」と謙遜しきり。
日本のカレーが多種多様であるがゆえに、“オールジャパン”と一括りにしづらいのも、及び腰の原因でしょう。しかし裏を返せば、47都道府県で、その土地特有のカレーが生まれ、もはや文化として成長を遂げているのです。
海外からは「日本のカレー=カツカレー」と思われがちですが、とんでもない。世界を驚かせる一皿は、地方のそこかしこに息づいています。
松本市はまさに、日本が誇るべきカレーのホットスポットなのです。
天守が国宝に指定されている松本城。城下町には、歴史・文化を保存する精神とともに、昔ながらの店も多数残されている。
歴史情緒あふれる街並みと共に、食文化も継承されてきた松本市。一方で東京からUターンしてきた若者のカルチャーも盛んです。
新旧の文化が交わるこの地のディープなカレー・ワールドへようこそ!
① 街を背負う“青春と魂のカレー”「松本メーヤウ」
「松本メーヤウ」をひと言で表すなら、松本カレーのレジェンド。地元で知らない人はまずいません。
直営店は2店舗あり、松本市の上部にあるのが「信大前店」、下部にあるのが「桐店」です。人呼んで“上メー”“下メー”。これ、松本市民の共通言語なんです。
こちらは“下メー”の「松本メーヤウ 桐店」。
東京にルーツを持ち、早稲田の名店「早稲田メーヤウ」と双子のように誕生したそうです。早稲田メーヤウが早大生のソウルフードなら、松本メーヤウは信大生の魂に根差したカレー。
渋谷で開催したカレーイベントに出店した際も、なんとお客さんの80%が信大の卒業生でした。20~60代まで、みんな松本メーヤウの味に惹かれて集ってきたわけです。
何年たっても忘れがたい、まさに“青春のカレー”と言えるでしょう。
絶対に食べてほしいのはグリーンカレーですね。タイカレーをイメージして食べると、予想を鮮やかに裏切られます。
桐店のビュッフェ方式のカレー。右奥がグリーンカレー。
ココナッツミルクはごく控えめで、出汁のようなうま味を濃厚に感じます。日本米に抜群に合う!
松本式の味に衝撃を受けた全国のシェフたちによる
「出汁グリーンカレープロジェクト」も始動しました。今後のカレーカルチャーを牽引する一皿です。
ちなみに桐店はビュッフェ方式で、カントリーカレーやカボチャカレーなど、ここにしかない変化球を楽しめます。時々登場するパイナップルカレーを、メーヤウ定番・激辛のチキンカレーに混ぜて、“甘辛”に調整するのがツウの食べ方。ぜひお試しあれ!
松本メーヤウ 桐店
住所:長野県松本市桐1-2-35 小松プラザ1F
営業:11:30~21:00(L.O.20:30)、無休
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