歴史や文化の重みが、着る人の個性を引き立てる
先人たちの知恵から学び、和服を現代のかたちへと落とし込んでいく〈SAGYO〉。なかには、廃盤となったアイテムを復活させたものや、ローカルの中から発掘しデザインを別注したものも。
「例えば、マグロ漁船で働く人も履いていたという超防寒仕様の靴下『マグロ漁船の靴下』は、友人の実家の工場が作っていたのですが事業縮小のため、数年前に廃盤となってしまいました。あまりにも温かくて最高だったので友人からネーミングを買い取らせてもらって、デザインと設計はそのままに糸を変えてより履きやすくなるよう復刻させました。
それから雨合羽の『二部式雨衣』は、三重県の漁港で愛用されていたものですが、水産用は重すぎたので農業用に軽くし、強度を保ちつつも防水性の高いデザインを工場に別注しました。こうした知られざるいいアイテムは、気がつくと黒字なのに後継者の問題で廃業したり、自然減少していってしまいます。こちらが探して見つけ出さないと、いずれはなくなってしまうかもしれない。だから少しでも拾えるものは拾って、商品として届けていきたいと思っています」
「マグロ漁船の靴下」。足先部分は蒸れにくいウールメインの糸を、それ以外はアクリル素材の糸を採用し、履きやすさを実現させている
軽量で破れにくい生地を使った「二部式雨衣」
〈SAGYO〉が生まれて8年ほど。真摯にものづくりと向き合ううちに、歴史や文化の重みに触れることもあると言います。
「野良着を作っていて思うのは、年齢や性別によるセグメントがないということ。服に体型を無理に合わせる必要もないですし、それこそトレンドに左右されることもない。従来のファッションカルチャーとは違った文脈が流れているからか、〈SAGYO〉の野良着を纏うと着る方の人となりが表現されるんですよね。それはなぜか。もしかしたら和服が持つ歴史や文化の重みがそうさせるのかもしれません」
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