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「おひとりさまホテル」は究極の気を遣わない旅

星野 でも、ルームサービスで料理が出てくるという点では、Uber Eatsという選択肢もありますよね。その違いは何なのでしょう?

マキヒロチ やっぱり圧倒的な非日常感ですね。自宅でキッチンがあるのに料理をせずにUber Eatsを頼むのはなんだかうしろめたさがある。でもホテルに泊まると、旅行というものに料理を食べる行為がパッケージングされているから、うしろめたさを感じないんです。

「おひとりさま」の深層心理を解き明かそうとしている星野

「おひとりさま」の深層心理を解き明かそうとしている星野


星野 おもしろいですね。キッチンがある自宅の日常の延長線上にあるAirbnb(エアビー)ではなく、ホテルという非日常の空間に身を置くことに意味があると。でも、ひとりで行く必要性はどこにあるのでしょう?

マキヒロチ 漫画『おひとりさまホテル』は、ひとり時間の過ごし方を提案するメディア『おひとりさま。』を運営するマロちゃんと一緒につくっているんです。ふたりで共感するのが、おひとりさまの魅力は誰の目も気にしなくていいこと。思い立ったときにふらっと行きたいホテルの予約ができるし、部屋で脱ぎ散らかしても、ルームサービスで贅沢しても誰にも怒られない。

星野 一緒に行く人に気を遣わなくていいってことですね。私はこの歳になって、スキー仲間と一緒に行っても、ひとり部屋で脱ぎ散らかすし、相手のお財布事情も気にしなくなりました。ひとりだと思い立ったときに行けるのはいいですね。

マキヒロチ 日にちを事前に決めなきゃいけないのもそうなんですが、旅好きの友人を「このホテルに行こう!」と誘ったときに、「行ったことある!」と返されると気持ちが沈んじゃうんですよね。

星野 マキヒロチさん自身はホテルのリピートはされないんですか?

マキヒロチ 星のやでリピートしたのは「星のや富士」だけなんですけど、もっと手軽な価格帯のホテルであればリピートすることはあります。私が好きなホテルをリピートするのはいいんですが、一緒に行く相手とは初めてを共有して味わいたいと思っちゃうんですよね。

星野 なるほど(笑)。ひとりだったらそういう矛盾やわがままを誰にもとがめられない。おひとりさまは「究極の気を遣わない旅」なのかもしれないですね。


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