売れ筋のグッズについては後ほど伺うとして、仁里さんとサッカーを巡る半生について簡単にご紹介したい。

「私は東京の大田区で生まれ育ったんですが、静岡出身の父が清水エスパルスのファンだったので一緒に試合を観に行っていました。

そんな体験もあり、小学生の頃から遊び半分でサッカーを始め、都内の中高一貫校に入ってからは女子サッカー部に入って本気で取り組みました」。

仁里さんをサッカーの世界に引き込んだお父さん。

中高ともにサッカー部に所属したが、試合には出たり出なかったり。高校2年生のときには練習中に足を捻って靭帯を損傷する怪我もしたという。

「ポジションは長友さんとかがやっていた右サイドバック。相手のサイドの攻撃を防いで、攻撃シーンになったら前まで上がってクロスを入れる役割です。1対1の駆け引きになったときは、重心を低くして右も左も抜かれないようにして最後は体を入れるというプレイが好きでした」。

学校の授業とサッカーの練習に明け暮れた高校時代。

しかし、もともと目立つことが好きではなかった仁里さん。将来はJリーグのクラブチームで裏方として働きたいと思うようになる。

「高校卒業後はスポーツマネジメント学科がある順天堂大学に進学。プレイヤーはやめて、男子サッカー部のマネージャーを4年間務めました。

練習スケジュールの管理から選手が大会に出るためのエントリー、遠征のバスの手配や荷物の準備など、裏方仕事全般を担当していて、オフの日も監督からバンバン電話がかかってきます」。

普段は事務作業がメインだが、時にはピッチに出て水分補給のアシストをすることも。

普段は選手や監督から感謝の言葉を聞くことはほぼなかったが、4年生のときに出場した大きな大会で3位になったときは、試合終了後に「よくやってくれた」とハイタッチをされた。これまでの頑張りが全部ここに繋がっていたんだなと感動したという。

「4年間のマネージャー生活を通してJリーグのスカウトの方とも交流できましたが、やり尽くした感もあって大学卒業後はホテルに就職しました。

でも、ホテル内のレストランでコース料理を振る舞っているところに大学サッカー部時代の監督から『フロンターレが人を探しているから話を聞いてみないか』という連絡が来たんです」。

「このタイミングで自分が裏方としてどこまでできるのかを見てみたかった」と思い、2022年3月に入社。在庫管理がまだ十分ではなかった状態でグッズ担当を任される。

等々力陸上競技場のグッズ販売会場。

仁里さんに与えられた仕事は、選手や協賛企業が購入したグッズの管理、請求書の処理、店舗レジへの商品登録など。

現在はレジ周りのシステム改革も中心になって進めており、これの導入が終了すれば膨大な数があるグッズの在庫管理もスムーズに行われるそうだ。

「フロンターレのサポーターさんには本当に支えてもらっています。選手が地域イベントに出たときにはボランティアで手伝ってくれますし、月に1度のサポーター定例会ではさまざまな意見をいただきます」。