非日常における心を入れ替えるための特別な時間が旅であるのに対し、日常生活を送る中で心が壊れそうになった時の対処法もある。
「これは昔から決まっているのですが、まず香りです。お香やエッセンシャルオイルで、好きな香りに包まれるようにしています。
仕事に集中したいときや部屋でリラックスしたいとき、そして心を穏やかにしたいときなど、シチュエーションごとに使いわけています。あと音楽もそう。
ネガティブな出来事があったり心が疲れているときに、好きな香りと音楽に包まれていると、気持ちが落ち着いて今の自分というものを客観視することができて、それによって物事を冷静に考えられたり、気持ちがコントロールできるようになるんです」。
俳優を筆頭に、ファッションディレクターやサステナブルコスメのファウンダーなど、井浦は多くの肩書きを持つ。仕事によるギアの切り替えはどうしているのか訊くと、自身が敬愛しているという陶工・河井寛次郎の言葉を引用しながら。
「河井寛次郎さんの”暮らしが仕事、仕事が暮らし”。僕はこの言葉を胸に刻んで日々過ごしています。
ONとOFFの時間を仕事とプライベートという小さな枠で考えるのでなく、生きているということ自体がずっとONなのだという解釈です。だから捉え方の違いだと思います。
プライベートで何もしない時間は僕にとってものすごく贅沢なひとときで、何もしないというわけでなく、仕事や趣味を問わず、色んなことに思いを巡らせる、想像をしたりイメージすることが好きなんです。それが次のクリエーションにつながると思いますし、常に何かを考えている方が性に合っています。
逆に、無理に“無の時間”に浸ろうとするとストレスになってしまい、ウェルビーイングではないのです。だから自分の心身に合った生活スタイルを営むことが大事だと思います」。
3/3