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津波とは、水の塊が押し寄せること 



南海トラフ地震や首都直下型地震など、巨大地震が発生する可能性は常々指摘されている。

沿岸地域に住む人は地震による津波にも警戒する必要があるが、その恐ろしさはテレビを見ているだけでは想像が追いつかない。

3.11の震災で10メートル(最大遡上高)の巨大津波を経験した安倍さんは、津波について次のように話す。 



「津波の恐ろしさを想像するのは難しいですよね。高い波が1、2回ザバーンときて引いていくと思ってる人もいますが、実はそうじゃありません。

25メートルプールに張った水を想像してみてください。あの中の水すべてが大きな塊となって、ものすごいスピードで押し寄せてくる。それが津波なんです。 

僕たちが住んでいた宮城県東松島市野蒜地区の場合は、10メートルを超える水の塊が10分、20分と押し寄せてきたんです。僕らの地域では、夜にかけて第5波まで続きました。津波はどんどん大きくなるんです」。 

誰もが知っておくべき「背浮き」の存在 

想像を絶する水量が、東北の沿岸部を飲み込んだ。当然、建物にも水が流れ込み、避難所とはいえ安全ではなかった。

そこで役立つのが「背浮き」の知識だと安倍さんは付け加える。誰もが知っておくべきサバイバル方法のひとつだ。 

「先ほど話したような破壊力のある津波では、どうすることもできないのが現実。でも、豪雨による家屋内浸水もそうですが、市街地に流れ込んだ津波は下からじわーっと水が上がってくるんですよね。そういった津波なら、『背浮き』をすることで助かる確率が上がります。ライフジャケットがなくても、自分の体を浮き輪代わりにできるんです」。 

水(真水の場合)と人の比重は、空気を吸った状態で水1に対して0.98程度。理論上、体の2%は水に浮くことになる。その少し浮かせた口や鼻で、呼吸を維持することができるのだ。

「この簡単な技術を身に着けるだけで、非常時に慌てることなく呼吸ができ、溺水から命を守ることにつながります」。

やり方はこうだ。 



「水の上で仰向けになり、大の字の姿勢を取ります。呼吸をして体内に空気を入れれば、自然と体は浮きます。そして、そのまま慌てずに救助を待つんです。これは、海や川で溺れそうになったときも役に立つ方法です」。 

東日本大震災の津波でも、実際に背浮きをしたことで助かった命があった。安倍さんの教え子だ。 

「3.11の前からボランティアで防災訓練を実施してきたんですけど、過去に僕が教えた子供が背浮きして助かりました。

その子が避難した体育館の中にも津波が押し寄せて、水でいっぱいになりました。そのとき、咄嗟に教えられた背浮きをしたらしいんです。新聞でそのニュースを知ったときは、本当にうれしかったですね。 

最近では、小学生がプールの授業で練習することが多くなりました。前にも言ったとおり、災害に遭うと人間は冷静ではいられなくなります。それでも正しい行動ができるのは、やっぱり訓練の積み重ね。普段の防災の意識が重要なんです」。 


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