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2. 自分の命を優先して守れ!



次に安倍さんが話しはじめたのは、岩手県に伝わる言い伝えだった。

「岩手に『津波てんでんこ』という言い伝えがあるんです。三陸地方は、これまで何度も津波を経験してきて、子供や親、親戚を亡くした悲しい歴史があります。その経験から生まれた言い伝えが『津波てんでんこ』で、津波が来たら各自が高台に急いで逃げろという意味です。

実は東日本大震災で、この言葉が誤解を生んで、『自分だけ逃げるなんて、弱者を置いていくのか』という議論が一部でありました。でも本来は、命をつないでいくための究極の言葉なんですね。

何が言いたいかというと、自分の命を守るのが大前提。僕たち夫婦も、3.11の震災直後に近所の人たちの安否を確認しに行きましたが、本当はすぐに逃げなきゃいけなかった。

大きな災害時に、自分だけが逃げる判断をするのは難しいことなんです。だから、普段から家族や近隣の人と話し合って、それぞれが自分の責任で逃げることを確認しておくことが大切です」。

災害が起きたらどこに避難するのか、日頃から家族で話し合えているだろうか。震災時に家族がばらばらになっても「事前に約束したから、ちゃんと逃げてるはずだよね」と思えれば、みんなの生存率向上と安心にもつながるはずだ。

3. 財産を捨て、即避難せよ!



安倍さんが東日本大震災で得た次の教訓も、今日から早速できることのひとつだ。

「津波、地震、豪雨など、災害の種類に関わらず、自治体の呼びかけがあったら『すぐに避難する』がセオリー。例えば自分の田んぼや畑が心配だからといって見に行く人がいますが、絶対にNGです。

気持ちは痛いほど理解できるんですよ。田んぼは農家の財産ですからね。でも、その衝動に蓋をして避難する。いざというとき、すぐに判断できないからこそ、事前に覚悟を決めておく必要があります。

僕たちも3.11の震災では、津波が来ているのに、事務所の片付けや会社の財産である潜水機材などを確認していて避難をしませんでした。命が助かったのはたまたまです。災害時は財産を捨てないとダメ。資機材などは後で買い直せても、命は買い戻せませんから」。

防災マップを確認し、自分が住む地域で起こりうる災害は知っておくことが大切。避難所の場所を知らない人は、今すぐ確認を。


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