▶︎すべての写真を見る 日本で暮らす以上、どこにいても豪雨や台風、津波による水害や土砂災害の猛威から完全に逃れる術はない。
災害に遭った被災者たちは「まさか自分の身に起きるとは」と口を揃えるが、この危機意識のなさが命取りになる可能性は十分にある。
「リアリティを持って備えておくことが、自分や家族の生存率を上げることにつながります」。前回、
津波から生還した壮絶な体験を話してくれた安倍 淳さんはこう断言する。
命を守るために、これだけは守ってほしいことは何かと問うと、思いを託すかのように5つのポイントを教えてくれた。
▶︎“床板1枚”で生還したプロダイバーの失敗談 話を聞いたのはこの人 安倍 淳●潜水工事事業を行う「朝日海洋開発」代表取締役。東日本大震災で被災した約1カ月後から事業を再開し、行方不明者の捜索などに従事。12年以上、講義や実技指導を通して、震災で得た知見を国内外で積極的に伝えている。
災害に遭遇したら? 生存率を上げる5つのルール
1. リアリティを持って備えよ!
「日本人はこれまで、何百回、何千回もの災害を乗り越えてきましたが、当然、多くの犠牲が生まれているわけです。でも、もし震災で得た教訓を全員が自分事として受け止めていれば、もっと救われた命はあったはずです。
東日本大震災から12年以上が過ぎて、ほとんどの人はもう災害の教訓を忘れかけています。人間は忘れる生き物だからしょうがないけれど、尊い命を守ってほしいから、僕らはリアルな体験談を伝え続けているんです」(安倍 淳さん、以下同)。
潜水前のダイバーと作業手順について確認する安倍さん(写真・左)。
そう話す安倍さんは、防災訓練への参加を強く推す。
「いざ災害が来たら、どんな人だって冷静じゃいられなくなるんですよ。プロダイバーの僕自身、津波に流されときはパニックになったし、何も考えられずフリーズして動けなくなった瞬間もありました。
でも、あとから考えると、そんなときでも無意識に正しい行動が取れていた場面もたくさんありました。体に染み込んだ訓練の積み重ねがあったからですね。
普段からきちんとシミュレーションしていれば、冷静じゃなくても正しい行動ができるんです。避難訓練に参加するのもいいでしょう。災害時にどう行動するかをイメージして、リアリティを持って備えてください」。
最後に避難訓練に参加したのはいつだったか。どこで地域の訓練が行われているのかを知らない人も多いだろう。生死を分ける咄嗟の判断を鍛えるためにも、ぜひ一度は参加するべし。
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