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4. 子供に非日常を体験させよ!



「有名な話ですが、アメリカのグランドキャニオンには、転落防止のための安全柵などが一部ありません。観光名所なのに、崖から落ちても自己責任。一方、日本では事故が起こったら責任の所在が問われる。だから、危ない場所には柵が設置されている場合がほとんどです。

日頃から子供が怪我をしないようにするのは大切ですが、安全な環境ばかりにいると、災害が起こったときに何が危なくて、何が危なくないのかの判断もつかないんです」。

災害時、自分自身で命を守れるよう、子供たちにも判断力を鍛えてほしいと語る安倍さん。その訓練には、キャンプがおすすめだという。

「庭があればテントを張ってもいいし、山や海に出かけてもいい。キャンプで命の危険を感じるわけじゃないけど、夜は暗くて怖いし、食事も睡眠も普段よりは制限されるじゃないですか。そういう非日常を味わうことが大切です。それを重ねることが、子供たちにとってはいい訓練になると思います。

安全な環境で非日常の空間をたくさん体験して、誰かを支える力、そして自らが生きる力を養ってほしいですね」。

5. 危機管理のセンスを磨け!



最後に、防災について安倍さんが強調したのは、意外にも「感性」の話だった。

「まずは自治体の指示に従って避難すること。これは間違いなくセオリーです。ただ、繰り返しますが、“自分の命は自分で守る”というのが大前提。自治体とか、その場にいる指揮者にすべての判断を任せるという意識は捨てた方がいいでしょう。

2014年に韓国でセウォル号が沈没し、300人以上の犠牲者を出しました。船が傾いているのに『部屋で待て』と指示された学生が、それを疑問に感じながらも逃げずにいた。結果、多くの命が亡くなりました。

韓国ではほかにも、同じようなことが起こりました。2017年に起きた地下鉄の火災事故です。避難通報があって、電車内に煙が入り込んできたにも関わらず、『隣の人が動かないから自分も大丈夫』といった心理が働き、誰ひとり逃げる行動をしませんでした。これは韓国で社会問題になりましたね」。



「災害が起きているのに、まわりの人がそのまま動かなければ大丈夫だと思って避難しない。そういった集団心理は、日本にもあります。集団行動がダメなわけではないけれど、防災では弊害になることがあるんです。

何が危ないか、いま何をすべきか。自分の命を守れるかどうかは、その人の感性によるんですよ。だから、いざというときのためにも、普段から危機意識を持つこと。どうしたら自分の命を守れるか、危険を察知するセンスを磨いてほしいと思っています」。


「まさか自分の身に起きるわけない」という思い込みは、百害あって一利なし。

被災経験者である安倍さんの言葉と思いをしかと受け止め、自己管理のセンスを磨き、いざというときに命を守れる行動を日頃から心がけよう。

ぎぎまき=取材・文

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