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真新しさ”に宿る、新しい恐怖体験


──齊藤監督の本作との出会い、第一印象は。

齊藤:2019年、本作が刊行されてすぐのタイミングで、赤城プロデューサー(フラミンゴ)と中村プロデューサー(日活)が僕の事務所に直接お越しいただき、『スイート・マイホーム』の監督をやらないかと提案いただきました。

僕自身、本を読むのは遅いほうなんですよ。しっかりと時間をかけて、恐る恐る読みました。その時思ったのは、この本は、「実写にすることでたどり着ける表現」というものをすでに描ききってしまっている、ということです。

これは男性が、女性性や母性に感じる“怯え”に似ている感覚。そんな、聖域のような部分を突き付けられる読書体験でした。

──神津先生は、映画化の話を聞いてどう思いましたか。

神津:最初、映画化の話をいただいたときは「信じられない」と驚きが大きかったです。齊藤監督からも様々考えていることを共有いただきつつ、物語が完成していくのを楽しみにしていました。



──本作の舞台は「まほうの家」。その“暖かい家”からは想像もつかないようなおぞましいストーリーが展開されていきますが、神津先生はどのように本作を生み出したのでしょうか。

神津:私自身、作品の舞台となった長野に住んでいるのですが、この「まほうの家」と同じような構造の“暖かい家”を建てた経験から着想しました。

実際に「まほうの家」に住み始めて、「ここであんなことやこんなことが起きたら怖いな〜」と日常の中に潜む“怖さ”を妄想する中で、勝手にキャラクターが浮かんできたんです。あとは彼ら・彼女らが勝手に動いて、いつの間にかあのラストに辿り着いていました。

(c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社

(c)2023『スイート・マイホーム』製作委員会 (c)神津凛子/講談社


ラストを決めずに前から順番に書いていたら“行きついた”ので、はじめはあまりこの作品の怖さが分からなくて。周りの人に読んでいただいて話を聞くと「すごく怖い」と言われるので、「そんな酷い話だったかな」と思ったほどです。


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