新しい文化の”空間”の必要性
このように街中を笑顔で滑走する若者の姿は、今後も迷惑と捉えられてしまうのだろうか!?
そしてストリートでのスケートボードには大きな話題性があるのなら、ついこんなことも想像してしまう。
「いっそのこと許可の方向に舵を切ったら、街おこしに繋がるのではないか」
もし仮にそうなったとしても、割れ窓理論というものがあるように、そこに便乗して関係ないところでも見境なく滑走したり等、度を超えた行動をする人が出てくる可能性も十分にあるし、治安の面を不安視する方もいて当然だと思う。一筋縄ではいかないことは百も承知だ。
だが現在の日本は、東京五輪におけるメダルラッシュが物語るように、世界的に見て最もスケートボードがホットな国のひとつでもある。
それなのに本質であるはずのストリートが、世界の流れと逆行した禁止政策ばかりに傾倒してしまっているとなると、この地で育つスケートボーダーからは創造性が失われて、それがシーンの衰退へと繋がってしまわないだろうか。
現に最近のコンテストにおけるセクション構成の傾向のひとつに、セオリー通りではない、ストリートにあるような癖のあるセクションをあえて織り込んでいる節があり、そこをいかに乗りこなすかが高得点に繋がるといった流れも見えてきている。
そんなところからも、スケートボードは街と密接な関係にあるアクティビティであることがわかるのだ。
とはいえ、これからもスケートボードはオリンピック種目として採用され続けていくことが決まっているので、それであれば、愛好者と社会がいかにして街をシェアしていくのかを話し合い、日本なりの解決策を見出していくことの方が、禁止の一辺倒という現在の対策よりも、よっぽど最適解になるではないかと思うところもあるのだが、人々の目にはどう映るのだろうか。
では最後にこんな言葉で、3回にわたってお届けしてきたストリートスケートのコラムを締めくくりたいと思う。
画像:YouTube『 One Week of CPH OPEN 』Thrasherマガジンより
『文化を切り離してしまうと社会は貧しくなってしまう。特に子供たちは夢を見ることを恐れてしまう。より良い教育を受け、より良い市民になることが全てになってしまう。それでどうやって夢を見ればいいの?若い世代は自分の人生を理解するために、アンダーグラウンドを含めた文化の”空間”が必要だ』 これは「Copenhagen Open(コペンハーゲンオープン)」と呼ばれる、街を使った世界最大のスケートボードボードの祭典から、主宰の文化レジャー市長のコメントを切り取ったものだ。
ではここであらためて社会に問いかけてみたい。
「これから日本の街はどうなっていくと思いますか?」 その行く末は、我々のこれからの行動にかかっていることは間違いない。
吉田佳央 / Yoshio Yoshida(
@yoshio_y_)
1982年生まれ。静岡県焼津市出身。高校生の頃に写真とスケートボードに出会い、双方に明け暮れる学生時代を過ごす。大学卒業後は写真スタジオ勤務を経たのち、2010年より当時国内最大の専門誌TRANSWORLD SKATEboarding JAPAN編集部に入社。約7年間にわたり専属カメラマン・編集・ライターをこなし、最前線のシーンの目撃者となる。2017年に独立後は日本スケートボード協会のオフィシャルカメラマンを務めている他、ハウツー本の監修や講座講師等も務める。ファッションやライフスタイル、広告等幅広いフィールドで撮影をこなしながら、スケートボードの魅力を広げ続けている。
「Skateboarding Unveiled VOL.4」より