大学卒業後は美容関係の会社に就職したが9カ月で退職。その理由がなかなかに衝撃的だった。
「実家が火事になったんです。火元は私の部屋でタコ足配線が爆発したみたいで。そこ以外の被害はなかったので普通に住めるんですが、火事を機に、『生』と『死』について意識するようになり……。
もともと子供の頃から生きづらさを抱えていたこともあり、私自身が今生きづらさを抱える誰かのために、何かできないだろうかと考えるようになりました」。
死ぬか、死ぬ気で頑張るか、の二択。唯香さんは東京で頑張ってみるという選択をして、キャリーバッグひとつで上京した。しかし、お金も仕事もないため家も借りられない。
「途方に暮れていたら東京に住んでいた大学時代の友達が『うちに来なよ』と言ってくれたんです。結局、狭い1Kの部屋で10カ月くらい暮らしました」。
小さなベッドで「おやすみー」と言いながら一緒に寝ていた恩人の菜々ちゃん。
その後、人材系の会社に就職。広報担当として活動しながら、取締役とタッグを組んで自社の採用のために開設した「ユイカとヒロシ」というTikTokのアカウントがバズリ、現在のフォロワーは10万人を超えている。
一方で、「私が発信する内容が今生きづらさを抱える人の心の支えになれば」という思いもあり、昨年11月からは医療ヘルスケアの分野で薬の課題に困っている人をサポートするharmoでも広報担当として働いている。
電子お薬手帳「harmoおくすり手帳」(右)、ワクチン接種管理「harmoワクチンケア」(左)。
「『おくすり手帳』は従来のおくすり手帳を電子化したアプリです。医療機関で処方された薬の履歴を見られます。
たとえば、5人家族だと5冊の手帳が必要ですが、それもアプリで一元化して家族みんなで共有できるというのが特徴のひとつです」。
harmoと提携していない薬局でも処方箋のQRコードを読み込むと履歴が表示される。
「仙台に住んでいる祖父母の家に時々遊びに行くのですが、おじいちゃんが心臓病、糖尿病で今も薬を大量に飲んでいて。その管理の大変さも『harmoおくすり手帳』で解決できます」。
さらに、「錠剤が小さいと掴みづらい」「錠剤が大きいと飲みづらい」などといったユーザーの悩みをアンケートで集め、製薬会社にフィードバックして改善を図る試みも始めている。
仙台のおじいちゃんとおばあちゃん。
「harmoおくすり手帳」は京都の清水寺とも協業した。パーソナルヘルスレコードの新たな活用方法の提案として、「harmoおくすり手帳」の専用ICカードを封入できる日本初の「おくすり御守」を制作したのだ。
「ITリテラシーの低い高齢者も、お守りは肌身離さず持っていることも多いですよね。harmoと提携する薬局でピッとタッチしてもらったら薬の服用履歴が出ます。現時点では非売品で一部の薬局で置いていただいています」。
清水の舞台で知られる名刹 meets 電子おくすり手帳。
この「おくすり御守」は朝日新聞が主催する「ウェルビーイング・アワード」で『ゴールド・アイデア賞』を受賞した。
授賞式の様子(唯香さんの左隣が代表取締役CEOの石島 知さん)。
そんな唯香さんを推薦してくれたのはワクチンケアの開発を担当している浪川由美さん。
「とにかく仕事が速いので信頼しています。ワクチンケアはまだ実証実験中なんですが、北畠さんはいろんな情報をキャッチアップして社内外に発信してくれます。
自分たちだけだとどうしても専門的になってしまいますが、それを噛み砕いて伝える才能がすごい」。
年間7000件ほどもあるというワクチンの打ち間違いを防ぐために「harmoワクチンケア」の開発に携わる浪川さん。
ワクチンケアのアプリでは医療従事者向けの画面もあり、チェックインが完了するとユーザーの接種履歴などが連携され、今日どのワクチンを打つことができるかを確認できる。
「×」は今日打てないワクチン。
また、ワクチンの箱に表示されている「GS1コード」をカメラで読み取るとワクチン接種の可否情報が出る。
これも「harmoワクチンケア」アプリの推しポイント。
唯香さんはharmoの広報担当として幅広いメディアにも積極的に出演している。取材日の直前に呼ばれたのが「エフエム京都」。
「α-IKIGAI Bar」という番組でharmoのサービスや自分が大切にしている想いについて語った。
なお、harmoのロゴは石を積む「ロックバランシング」。
「エントランスに、それを体験できる積み木がありますよ」。
かなり苦労した末に積んでくれました。
「自分の居場所」を見つけて「薬の課題に困っている人の心の支えになりたい」という思いを実現させつつある唯香さん。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
スマホで健康管理という時代。
[取材協力]harmowww.harmo.biz