周囲にいたクリエイティブでカッコいい人たち
ーー’90年代と言えば、裏原ムーブメントが一気に世界へ広まった時代ですが、印象的な出来事はありますか? 川辺ヒロシ スケシン(グラフィックデザイナー SKATE THING)やNIGO®、ジョニオ(アンダーカバー デザイナー 高橋盾)がデザインしたものが全国にバーっと広がっていく様を間近で見ていましたね。
渡辺俊美 僕が(芝浦)ゴールドで最初にショップをやったんだけど、アンダーカバーとトウキョウ・エアランナーズの三者で手刷りのTシャツを売ったりしましたね。あの頃の盾くんはまだ学生だったし、それを考えるとすごいですよね。みんなとはしょっちゅう会ってたし、ゴールドの大画面でスト2(『ストリートファイターII』)とかやってたもんね。時代って言えば時代だったね。
BIKKE まだバブル終わりだったもんね。
渡辺俊美 そう考えると、僕らがファッショナブルだったというよりも、気づいたらクリエイティブでカッコいい人に囲まれていたっていう感じだね。先輩には藤井悟くん、同年代には藤原ヒロシくんもいましたし。
川辺ヒロシ なかでも、スケシンがやっぱり相当デカいよね。シンちゃんが1番トバした格好してたし、それでいてカッコいい。
渡辺俊美 東京の人ってこうなんだって思ったよね。派手な格好をしてるんだけど、中身があるというか余裕があるから、そこに東京ストリートの歴史がある感じがしましたね。初めて同年代でクラったというか。地元じゃお山の大将だったんだけど、やっぱり本物がいるんだっていう。
川辺ヒロシ あの頃、スケシンの事務所に遊びに行って、僕だけお酒を飲みながら彼の様子を見ていたんですけど、まったく仕事をしてるようには見えなくて。ずっとネットサーフィンしたり、コラージュを作ったり。いつ仕事してんだろうなと思ってたんだけど、結果として、とんでもないグラフィックを生み出していって。完全に遊びと仕事が一緒になっていて、そのやり方がすごく面白かったですね。
渡辺俊美 スケシンは会うたびにキャラが変わるしね。
川辺ヒロシ 自分の流行りでロカビリーみたいな格好したりね。
一同 そうそう(笑)。
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‘90年代のストリートカルチャーが生まれていく最中に、シーンの中枢にいたTOKYO No.1 SOUL SET。そのリアルな体験は、やはりとてつもないものだった。
‘90年代の話はファンタジーのようでノンフィクション。だからこそ、当時のリアルな話はレガシーなのである。
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