B面 本質的な使いやすさと、“ビームス印”の遊びをミックス
梨本さんのB面(BEAMS面)の顔は、メンズカジュアルのバイヤー。
吉田カバンとのコラボレーベル「B印 ヨシダ」(2022年に終了)のディレクターを務めた経験を活かし、バッグや財布の別注を数多く手掛けている。
栃木レザーを使用したスロウの最新トートバッグ。レザーはこれまでよりも薄く、裏地の毛羽立ちも抑えて美しく仕上げている。
ライフスタイルの変化もあり、バッグや財布はコンパクト化の傾向があるが、梨本さんがモノづくりで意識するのは、本当の意味で使いやすさだ。
「時代に合わせてなんでも小さくすればいいかといえば、そうでもありません。基本の大きさは変えないままでも、素材を軽量化したり、構造の無駄を省いたりすることで使い勝手は良くなります。逆に実用性を考えて、サイズを大きめにすることだってあります」。
ジャンスポーツのリュックは、使い勝手の良さを追求して、あえて少しだけ大きくリサイズ。
ジャンスポーツとの別注バックパックもそうだ。使い勝手の良さを追求し、あえてオリジナルよりも大きめにリサイズ。フロントポケットには、ジップ付きのメッシュポケットやフックを内蔵するなどひと工夫加えている。
「時にはミリ単位でサイズや、デザイン、素材を変えることもあります。小物は一度買ったら長く使う人が多いので、かなり細かい部分まで考慮して作っていますね」。
「マンハッタンポーテージ」の別注には、懐かしい大きめのタグとアイコニックな蛍光色を採用。
「このバッグにiPadが入ったら便利なんじゃないか」 「13インチのMacBookが入るポケットを作るべきでは?」など、今のライフスタイルをイメージしながら、ブランドや職人の個性を活かしたモノづくりをする。それが梨本さんの流儀だ。
「本質的な良さは追求しつつ、ちょっとした遊び心や抜け感みたいなものは忘れずに盛り込む。それがビームスのプロダクトの魅力だと思っています」。
まだ詳細は明かせないが、2023年には名作時計の別注も発売予定だ。
そして屋久島での生活が、思いがけないところで梨本さんのモノづくりに活かされることもあるという。
梨本さんは、屋久島の代名詞でもある杉を底板に使ったバッグをリリースしたこともある。
「樹齢50〜60年の屋久島地杉でも、過酷な環境で育つと目が詰まっているので、油分と香が強い。それを底板にすると防臭や吸湿効果があって重宝するんですよ」。
このように屋久島から生まれるアイデアは尽きない。
「屋久島に生息している鹿の革を使った財布も作りたいですし、酒好きのファンが多い屋久島産の焼酎『三岳』の専用ケースを作るなんていう提案をしたこともあります(笑)」。
小物作りやバイイングを長年手掛けてきた大ベテランの梨本さんが、たどり着いた屋久島ライフは、間違いなくB面にもプラスの影響をもたらしている。
梨本さんが手掛けた小物は、年末から年明けにかけて発売するものだけでも盛りだくさん。
東京ではトレンドの最先端を吸収し、時期を見て頭をリセットするために屋久島に帰るという理想的なサイクル。
距離を隔てた二拠点ライフは、梨本さんのアイデアを生み出すために欠かせない“最強ルーティン”といえそうだ。