成長に欠かせない業界連携と理解。
2030年には、7000億円規模になると予想されている空のモビリティ市場。
交通手段としての空の利用や観光地へのスムーズな移動が期待されている一方で、解決しなければならない課題も多いそう。
「まず一つは、法制度の問題ですね。例えば、『都内のビルの屋上にヘリで降りられますか?』というお問合せをよくいただきますが、今は離発着できる場所はないのです。緊急時や災害時に使えるケースはあるものの、事業として使用する許可はなかなか下りません。
あともう一つは、騒音の問題です。法律上、離発着ができるようになったとしても、その周辺住民の方が騒音を気にされることがあるので、その点を理解していただく必要があると思います。ハードウェアの側面でも技術の発展によって、騒音問題を解決できるようなアプローチができるといいなと期待しています」。
公共交通機関では時間がかかるエリアや、渋滞が多いエリアでもスムーズな移動が叶う
さらに、空の移動を実現していく上で、航空業界との連携も欠かせないと話す多田さん。
「なにより1番大切にしていることは安全運航なので、数ある業務のなかでも航空会社との連携は、特に優先度を高くしています。既存の航空会社の運航体制や、既存の許認可を僕らもしっかり理解できているということが、これからの市場展開に必要なことです。
あと、パイロット採用や育成面もですね。空の交通サービスの提供機会が増えても、航空機を運航できるライセンス所有者は限られていますから、航空会社との人材連携や仕組みづくりに注力していきたいと考えています」。
2030年、移動が苦にならない未来へ。
ひと足早く航空産業が盛んになっているアメリカでは、高齢者の方でも小型飛行機に乗って遠出をしたり、市内から空港までタクシーのように予約したりと、空の移動はより暮らしの一部になっているそう。
日本でも2030年代には、富裕層メインのサービスではなく、帰省時に利用できるくらいの価格帯やハードルであることが理想だと話す多田さん。
「僕の息子は1歳半で騒がしい時期なので、電車や飛行機などの長時間かかる移動は周りの目が気になってなかなか楽しめない部分もあります。車のようにプライベート空間で移動ができるヘリコプターがより身近になれば、旅行や帰省の頻度も増えると思います。
あとは、ご高齢の方や移動に対して不自由がある方にとっても、移動が苦にならない次世代交通の未来を創っていくことが目標です」。
F.I.N.編集部が、実際に空の旅を体験!
全国で拡大しているヘリコプター移動ですが、安全性や乗り心地も気になりますよね。そこで今回、F.I.N.編集部が実際に空の旅を体験してみました。
出発は東京・新木場にある「東京へリポート」。東京駅から車で15分、新木場駅からタクシーでワンメーターと便利なアクセスです。到着後、受付と必要書類の記入を終えると、搭乗するヘリがやってきました。
ヘッドフォンで機長や同乗しているメンバーと会話ができる
アテンドされながら、機体の中へ。事前に指定した座席に乗り込み、シートベルトとヘッドフォンを装着するといよいよ離陸です。
離陸後、3分ほどであっという間にレインボーブリッジ付近に
今回選んだのは、東京湾岸を10分間クルージングするプラン。東京タワーやレインボーブリッジ、東京駅など定番の観光スポットを通過します。
見慣れた街の風景も、上空から遊覧するという非日常的な体験に終始感動を覚えます。さらに、夜のフライトは夜景も素晴らしく、プロポーズのサプライズ利用も多いそうです。
移動のみならず、心を動かすような体験ができる空の旅。これからより身近になる未来が待ち遠しいです。