B面 古着をデザインソースにした、今にマッチする服作り
今季の新作サンプルをチェックする溝端さん。
溝端さんのB面(BEAMS面)の顔は、ビームス プラスのディレクター。2016年に現職に就任して以降、服作りはもちろん、別注企画も担当している。
アメリカのゴールデンエイジと呼ばれた1945〜1965年のスタイルをルーツにするビームス プラスにとって、溝端さんの古着コレクションは欠かせないデザインソースだ。
デザインソースになった古着に袖を通し、今の時代にマッチするディテールを吟味。
「この時代は第二次世界大戦が終わり、あらゆる面でアメリカが最強だった頃。その期間に生まれた衣料は世界中に影響を及ぼしましたし、それは今も続いていると思います」。
とはいえ、ビームス プラスの目的は、当時のプロダクトをそのまま現代に蘇らせることにあらず。今の時代に合わせて、どうアップデートするかが、溝端さんのセンスの見せ所だ。
ビームス プラスの新作[左]と、デザインソースとなった'50年代のハンティングジャケット[右]。シルエットはオリジナルからあまり変化させずに、柄、裏地、ポケットなどをモディファイしている。
「シルエットが格好いい’50年代のハンティングジャケットをデザインソースにするなら、そこは活かしつつ機能素材に変えたり、柄で個性を出したりします。古着の良さは残したまま、どうすれば今の時代にも着やすい服になるかを常に考えていますね」。
そしてこの秋冬には、溝端さんの古着愛を存分に落とし込んだ目玉企画が用意されている。
ファイヤーマンジャケットをデザインソースにした一着[左]と、サンプルとなった古着[右]。
先日「ノア(NOAH)」のオーナーであるブレンドン・バベンジン氏が手掛ける「ジェイ・クルー(J・Crew)」のニューラインナップが発表されて話題になっているが、ビームス プラスは、直々に依頼を受け、別注アイテムを展開する予定だ。
「古着のファイヤーマンジャケットをベースにしたトラッドな配色のジャケットや、ミリタリーパンツの型を活かしたタータンチェックのパンツなど……かなりいいプロダクトが完成したので、発売を楽しみにしてください。
最近は世界中のショップやバイヤーさんから認知していただけるようになったので、今後ますます別注やコラボに力を入れたいと思っています」。
今秋から展開されるジェイ・クルー別注には、特別なタグが付く。
日本ではあまり知られていないが、現在ビームス プラスの海外展開は、85店舗以上に及ぶ。
アメリカ、カナダ、フランス、イギリス、デンマーク、香港……、と国もさまざま。例えば、アメリカのNYだけでも「トッドスナイダー」「バーグドルフグッドマン」「ノードストローム」……と、取り扱いは名店ばかりだ。世界中でビームス プラスのファンを増やし続けている。
ラジオ好きが高じてラジオ番組をスタート!
そんな中、溝端さんは、違う角度から日本のビームス プラスファンに向けたアプローチを始めた。ビームス プラスでラジオ番組をスタートさせたのだ。
その名も「オールナイト ビームス プラス」。
ラジオの詳細はこちら。
「番組名は、もちろん『オールナイトニッポン』のオマージュです(笑)。昔からラジオを聞くのも趣味で、いつか自分でもやりたいと思っていたんですよ」。
コロナ禍でお客さんとのコミュニケーションが難しい中、何かできないかと考えた結果にたどり着いたのがラジオ番組だった。
配信は、なんと毎晩(25時〜)。パーソナリティは溝端さんをはじめ、日替わりでビームス プラスのスタッフが担当している。
しかも当初このラジオ番組は、ビームス プラスが自主的に(つまりビームス非公式で)始めたというから驚きだ。
「ざっくりとウィークリーテーマは設けていますが、番組の詳細内容はノープランで台本もなし。自分たちの気になる物、事、人、カルチャーをノンジャンルで発信しています。ちなみに僕の担当曜日は、木曜日。オールナイトニッポンでは、ナインティナインの日が一番好きなので、同じ曜日にしました(笑)」。
パーソナリティを務めるビームス プラスの面々。「オールスター感謝祭」では、一同が集結して配信した。
番組中に話が盛り上がりすぎて、配信が2時間を超えることもあるという。
「今では、店舗で『いつも番組、聴いてます!』と声を掛けられたり、ダイレクトメールでリクエストが届いたりもします。ビームス プラスの活動を、ラジオを通して少しでも知ってもらえたらうれしいですね」。
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世の中のあらゆることにアンテナを張り、興味を持ったらとことん探究して、さらに愛を深める。溝端さんの“果てしない探究心”は、今後もビームス プラスの可能性を広げていくに違いない。