OCEANS

SHARE

2022.09.18

ライフ

徳島の限界集落にある「未来コンビニ」の挑戦。地域の子供たちが未来を紡ぐために



当記事は「FUTURE IS NOW」の提供記事です。元記事はこちら

「地域を誇る」をテーマに掲げ、さまざまな観点から地域の今と未来について考察する企画。今回は壮大な自然と人の営みが共生する徳島県那賀町木頭地区にある「未来コンビニ」に着目します。

2020年4月の誕生以来、買い物手段が乏しかったこの地域の人たちの暮らしを支え、人と人、人と地域を結ぶ場となっているといいます。

どのように地域のつながりやコミュニティに寄与しているのでしょうか。「未来コンビニ」の店舗責任者の宮脇貴之さんの元を訪れます。

買い物に行くのに車で1時間強。地域の人の暮らしを支える「未来コンビニ」。

徳島県と高知県をつなぐ国道沿いに建つ「未来コンビニ」。小学校の跡地に誕生した。

徳島県と高知県をつなぐ国道沿いに建つ「未来コンビニ」。小学校の跡地に誕生した。


徳島市内から車で2時間超、高知市内から1時間半ほどかかる徳島県那賀町木頭地区。西日本で2番目に高い山「剣山」の南麓に位置し、公共の交通機関は1時間に1本バスがあるかないか。

住人も1000名ほどの「四国のチベット」とも呼ばれるこの地域に、2020年4月に誕生したのが「未来コンビニ」です。名前にも冠されるように“コンビニ”という機能を兼ね備えた場を設けたのは、地域の人たちの買い物環境改善のためだったと、店舗責任者の宮脇貴之さん。

「ここ木頭地区から最寄りのスーパーに行くには車で1時間半かかるし、コンビニまでは2時間くらいかかります。かつては移動販売や魚の行商が来ていましたが、最近ではその数がめっきりと減ってしまっていたんです。

ここで暮らす方々には週に1度、市街地まで行って買い物をする習慣があるのですが、この地域の過半数以上は高齢者。だから、それもなかなか頻繁には難しいんですよね。

そうした問題を解決し、地域の人が気軽に買い物ができる場として未来コンビニをオープンしました」。

地域の人たちの買い物問題を解決するためとはいえ、ネットスーパーやオンラインショッピングなどが定着した昨今の状況の中で、実店舗の必要性はあるのでしょうか。

「やはりインターネットやスマートフォンを使い慣れていない高齢者の方が多いので、実際に店舗で購入したいという方が多くいらっしゃいます。それに、アイスやデザートなどがふと食べたくなっても往復3時間かけて、市街地まで買い物に行くなんてことはなかなかできません。

都会で当たり前にすぐに手に入るものが、この地域ではそうはいかないんですよね。些細なことかもしれませんが、未来コンビニができたことで、そうした日常における小さな不便を解消できていると思います」。

ガラス張りの店内。木頭ゆずをイメージした黄色いY字の柱が印象的。

ガラス張りの店内。木頭ゆずをイメージした黄色いY字の柱が印象的。


壮大な自然の中にふと現れた、ガラス張りの未来的な建築。一際目を引く黄色いY字の柱は、木頭地区が誇る木頭ゆずをイメージしています。この地域が誇る産業をお店の象徴として使ったのは、より地域の人に愛され、地域のシンボルのような場にしたいという思いから。

「標高が高く、朝と夜の寒暖差が激しい木頭地区は、ゆずの栽培が最適な地域。しかし、“桃栗3年、柿8年、柚子の大馬鹿18年”と言われるように、ゆずの栽培は18年もかかってしまうので、これまでは産業としては成り立っていませんでした。

そうした中、木頭地区では、研究や技術革新を繰り返し、ゆずが実るまで3〜5年に短縮させることができたんです。地域の人たちの努力の結果、主力産業となったゆずをイメージしたデザインを取り入れることで、地域のみなさんが入りやすく、誇りに思っていただけるような空間づくりを行いました」。

ジャムやソープなど木頭ゆずを使ったアイテムが充実する。

ジャムやソープなど木頭ゆずを使ったアイテムが充実する。


生鮮商品や生活雑貨のほか、木頭ゆずを使ったサイダーやスイーツ、ソープなどが並ぶ棚を見ていると、他店とは違ったある店づくりがされていることに気づきます。

「お子さんや高齢者の方が商品を取りやすいよう、見やすいようにと、何度もシミュレーションをして、棚の高さを他店のものより低めに作っています。

私たち未来コンビニは都心のコンビニとは違って24時間365日営業しているわけではありませんが、こうした小さな工夫を凝らしながら、地域の人に近い存在でありたいと考えています」。


2/2

次の記事を読み込んでいます。