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途中、昨日の「登山客の減少」に話を戻し、では、何人が理想なのかを聞いてみた。ときに混雑やゴミが問題になるなか、かつての1万人を求めるべきなのだろうか。答えは「これから見つけていく」ということだったが、それには近藤さんの視点が欠かせないはずだ。

グラマラス富士登山の山頂での様子(写真提供=株式会社合力)

グラマラス富士登山の山頂での様子(写真提供=株式会社合力)


文化観光の“高付加価値化”が叫ばれて久しいが、近藤さんが独立したのは20年前。「当時は大型バスの大人数ツアーが当たり前。個人ガイドほとんどいなくて、周辺からは冷ややかな目で見られていた」という。

それでも突き進めたのは、富士山への思いと、スイスの山岳リゾート・ツェルマットで見た原風景があったからだ。「マッターホルンの麓街なんですが、車の出入りが禁止されているんです。空気がきれいで、子どもたちの笑顔が輝いていました」。自然が守られながら観光業でも成功し、それが未来へと還元されていく。そんな循環を理想に描いた。

個々人にあわせた安心で快適な登山のほか、富士山麓の樹海ネイチャーツアー、星空ツアーなどを手掛け続け、5年前からこのグラマラス富士登山を展開。「登山客の減少もあって、皆さんの考えも変わってきました。今は、このプログラムにも興味を持ってくれています」。また、後輩となる個人ガイドも少しずつ増えているという。

コロナ禍によって自然の大切さが見直され、サステナブルツーリズムへの関心が増したことも、こうした変化を後押しする材料になるだろう。

富士山では「富士山保全協力金」として任意の協力金1000円を徴収している

富士山では「富士山保全協力金」として任意の協力金1000円を徴収している


富士山は日本一高い山だからこそ、いっそうその頂を目指したくなる。「就職や還暦の記念など、節目に登る方が多い」と近藤さんが言うように、何かを掛けているからこそ、どうにか成し遂げようと無理をする人も多いのかもしれない。

しかし、一歩引いて、富士山全体をとらえ、その歴史や文化を学び、食を楽しみ、自然を存分に感じながら登る。その全てが富士登山だという向き合い方をすると、たとえ登頂できなくても得られるのはとても大きい。そして、そのひとつとして「標高3000mでコース料理を楽しむ」というのも、この上なく粋ではないかと思う。


鈴木奈央=取材・編集
Forbes JAPAN=記事提供

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