実は、グラマラス富士登山の準備は1カ月前から始まっている。というのも、このプログラムは地元のガイド「富士山登山学校ごうりき」がサポートしており、体調管理と装備品の両面について、事前に電話やメールでカウンセリングを受けることができる。
「富士山登山学校ごうりき」代表 近藤光一さん(写真提供=株式会社合力)
登山前日には、700回以上の登頂経験があるごうりきの代表、近藤光一さんがキャビン(星のや富士の部屋)を訪れ、装備の点検やレクチャーを行い、わずかな不安も解消してくれる。
夕食は、星のや富士流の「御師料理」だ。山梨県の郷土料理を参考に料理長が開発したもので、たっぷりの野菜やきのこ、鶏肉を豆乳味噌鍋で楽しみ、〆のうどんでエネルギーをチャージ。その後、体力や時間に余裕があれば、敷地内で開かれる“森の演奏会”や“バスソルトづくり”も楽しめる。
星のや富士流 御師料理
登山客はなぜ減った?
登山当日は、グランピング感満載の「モーニングBOX」をテラスで楽しみ、10時にチェックアウト。グラマラス富士登山は安全第一の“日中登山”のため、昼前に富士吉田口に集合するゆとりあるスケジュールだ。
標高2305mの5合目では、周辺を散策したり、昼食をとったりして、1時間半ほど高地順応をする。近藤さんと合流し、最後の装備点検をしたら、いざ出発。この日のゴールは7合目、標高約3000mにある山小屋「東洋館」。約4時間の登山だ。
歩くペース、足運びのコツ、呼吸、水分補給のタイミング……ふとした疑問は、尋ねる前に近藤さんがアドバイスしてくれる。そのほか、富士山の自然や歴史、他の登山道との違い、世界からの評価などの話題が絶えない。「会話をしながら一歩一歩踏み出していると着くんですよ」と近藤さん。
そんななか、ひとつ興味深い質問を投げかけられた。
「登山客の数は、私が独立した20年前に最多で1日1万人、世界遺産登録時には6000人、最近では4000人へと減少しています(富士吉田ルートのみの人数)。なぜでしょうか?」
世界遺産となり、外国人も含めて増えたかと思いきや、意外な事実だ。なかでも若者が少なくなっているというが、「モノよりコト消費」を好むとされる世代の実態とも異なる。弾丸登山自粛の呼びかけが成功しているからだろか。何が原因か、考えながらの登山が続く。
3/4