in サンフランシスコ
フォート・ポイントでクラシックなカットバックを披露する琢治。排他的な場所にもかかわらず、すんなりと溶け込んでいった。
マーヴェリックスがあるハーフムーンベイから海岸線を1時間ほど上がれば、いよいよビートカントリー、サンフランシスコへ入る。ケルアックの『オン・ザ・ロード』でサルとディーンがNYから目指した目的地だ。
サンフランシスコは同じカリフォルニアでもLAとはカルチャーが違う。’60年代、カウンターカルチャーが炸裂し、ヒッピームーブメントを生んだ土地だ。サーフシーンにもそれは色濃く影響を及ぼす。
12時半のロータイド前に到着すると、ストレッチのアドバイスどおり、目当ての波はいい感じに割れていた。
ゴールデン・ゲート・ブリッジの雄大な橋の下に、珊瑚礁などとは違い人の手によって造られた人工リーフ。ピークにはローカル、インサイドにはテック系で働くインテリジェントなシティサーファーが集う。
遊覧船やウインドサーファーが沖をクルーズし、橋の上ではひっきりなしの車の往来という、サンフランシスコのカルチャーを一枚の絵に収めたようなサーフスポットだ。
とはいえ、ローカリズムは強く排他的だとか。「とりあえずスマイルだぞ!」と作戦を練りつつ、ふたりは漕ぎ出した。
「雷治と初めてのポイントに入るのは、なんだか恥ずかしいですね。波もサーファーの様子もわからないですから。
もちろん、いい波にも乗りたいけれど、親父がパンチアウトされてはカッコがつかないし(笑)。そんなスリリングな状況をシェアするのは、子供と冒険しているようで楽しいです。
でも、逆に子供のほうがそういう環境を乗り切るのはうまかったりするんですよね。ローカルたちにも受けて入れてもらい、初めてのセッションはとてもうまくいきました。
雷治もこのレフトの波は気に入ってくれたみたいです。もちろん僕もね」。
<後編に続く>
[Profile]枡田琢治●1971年、神奈川県鎌倉市生まれ。現在はカリフォルニア州マリブ在住。元JPSAロングボードチャンピオンであり、映像、プリントなどでサーフカルチャーを発信。監督作品の『BUNKER77』はAmazonプライム・ビデオにて配信中。雷治は現在12歳で、インスタグラム(@ryjimasuda)でもそのライディングを公開している。