▶︎この記事の画像ギャラリーを見る まさかのフルモデルチェンジだ。いや、これはもう“生まれ変わった”と言っていいだろう。
あのトヨタ「クラウン」が16代目にして、SUVを筆頭にした4モデルへと激変した。
かつてはエグゼクティブの移動車として、あるいは安定の乗り心地の“タクシーの車”として巷に溢れていたクラウンが、一気に若返ったのだ。
初代の登場が1955年だから、実に67年目の変革である。
クーペ風SUVは今や世界的トレンド。トヨタは「セダンとSUVを融合させたクロスオーバースタイル」といい、グレード名にも「クロスオーバー」を使用している。
トヨタのクラウン。その名前は誰もが知っているだろう。
「しかしここ最近は、時代のニーズに答えられているのだろうか?」その自問自答を繰り返していたのだろう、だからこその、潔いほどの大変革。
トヨタの豊田社長は、徳川の世が15代で終わったことを引き合いに出し、この16代目は「明治維新」だと例えた。
新しいプラットフォーム(ボディの骨格)が与えられた新型クラウン。最低地上高はSUVとしては低い145mm。これは乗降のしやすさから導き出された高さだという。
16代目には4つのクラウンがあるが、その筆頭はSUVだ。
もともと16代目の企画担当のトップが、15代目クラウンのマイナーチェンジの企画を豊田社長に見せた際に、「本当にこれでクラウンが進化できるのか?」と言われたのが始まりだったという。
そこで担当者は「クラウンとは何か?」を徹底的に見つめ直した。
結果、担当者は歴代クラウンに「革新と挑戦」というスピリットを見いだし、豊田社長が就任以来言い続けてきた「もっといい車」「街いちばんの車」をゼロベースから考えた。
街中では前後輪を逆向きにして曲がりやすく、高速域では同方向に向けることでどっしりとした安定感を与えてくれる後輪操舵システムが備わる。
こうして生まれたのがこのSUV。リアに向かってルーフがなだらかに落ちて、車高がちょっぴり高いクーペ風SUVのニューモデルだ。
その見た目に従来のクラウンらしさは、良い意味でどこにもないと言っていいだろう。しかしボンネットの上に王冠が載り、リアに「CROWN」とレタリングされている。
パワートレインは2.4Lエンジン+フロントモーター+eAxle(2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステム)と、2.5Lエンジン+2モーターの2種類。
駆動方式は全車4WDだ。
カラーヘッドアップディスプレイ、前後のドライブレコーダー、音声による各種操作機能などトヨタらしい先進機能が充実している。
中でも2.4Lデュアルブーストハイブリッドシステムは、エンジンとフロントモーターが直結されたことで、6速ATにも関わらず変速時の息継ぎのない、スムーズな加速感が高速域まで味わえる。
また後輪をモーターで制御して、さまざまな状況に応じて前後トルク配分を100:0〜20:80の間で制御。滑りやすい路面でも安心して走ることができる。
もちろん先進安全運転支援機能は、トヨタブランドのトップモデルらしい充実ぶり。街中から高速道路まで、ドライバーを含めた乗員をあらゆる方向から守り、アシストしてくれる。
ステアリングヒーター、シートヒーター、足の出し入れだけで簡単に開閉するトランクといった快適装備、スマホによるドア開閉などで、使う人全員を快適に。
快適装備や先進装備など、メイド・イン・ジャパンのいいところが全部入ったかのようなSUV。
このSUVだけでも明治維新級なのに、担当者が改めて豊田社長に「今度のクラウンはこれです!」と持っていくと、ゴーサインが出るとともに「セダンも考えてみないか?」と言われたという。
だったら「この多様性の時代、セダンだけじゃなくハッチバックやワゴンも必要では?」とばかりに、4つのクラウンが誕生した。
「スポーツ」と紹介された第2のクラウン。その名の通り、走る楽しさに主眼が置かれたモデルらしいが、見た目はSUV。スポーティ=クーペやセダンという概念も変革された。
まずはSUVから、それ以外の3モデルは後から投入される予定だ。
さらに驚きなのが、長らく「クラウンは国内専用」という縛りがあったのに、16代目は海外約40の国と地域で販売されるという。
セダンタイプがこれ。フォルムも切れ長の目も未来的だ。これがタクシーとしてやって来たら、「え?」と思うはず。
ワゴンタイプはまだコンセプトカー段階のようで、詳細は今後発表される。
新型クラウンの発表会で「『日本のクラウン、ここにあり』。それを世界に示したい」と豊田社長。
そんな新型クラウンの車両本体価格は435万〜640万円。シリーズの第一弾としてSUVが2023年1月以降に販売される予定だ。
ちょんまげからざん切り頭へ、鎖国から開国へ変わった明治維新の頃のように、見た目も中身も一気に変わったクラウン。
「タクシーでよく見るアレでしょ」という認識は、今年いっぱいで改め直す必要がありそうだ。