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サステナブルな服作りは職人の技術にも影響を与える

5年後には創業100周年を迎えるという撚糸会社「備後撚糸」。代表取締役を務める光成明浩さんはその4代目である。光成さん自身も現場に立って糸を撚る職人のひとり。

5年後には創業100周年を迎えるという撚糸会社「備後撚糸」。代表取締役を務める光成明浩さんはその4代目である。光成さん自身も現場に立って糸を撚る職人のひとり。


「私は撚糸を“糸のお見合い”と呼んでいるんです。どの太さの糸を選ぶか。1インチ間に何回撚りをかけるのか。右に撚るのか左に撚るのか。どのくらいテンションをかけるのか。無限の組み合わせのなかからベストを探し出していくのが、撚糸屋の醍醐味なんです」。

広島県福山市芦田町。この山間の町で95年にわたり操業を続ける「備後撚糸」の代表取締役、光成明浩さんの言葉である。

備後撚糸の敷地は4500㎡と広大。工場棟内には年季の入った撚糸機、合糸機がずらりと並んでいる。

備後撚糸の敷地は4500㎡と広大。工場棟内には年季の入った撚糸機、合糸機がずらりと並んでいる。


備後撚糸は多くの繊維商社やメーカーに紙糸を納入する、国内屈指の撚糸会社。ワクロスの服に使われる紙糸もここで生産されている。

撚糸の工程を目の当たりにすると、服作りとはまぎれもない製造業であると確信する。幅1mm(その幅も、30mmまで多数の種類がある)のテープ状の和紙を、専用の撚糸機で撚る。

目指す糸によって撚る回転数やテープにかけるテンションを変えねばならない。テンション、すなわち引っ張る強さは硬貨のような錘りで調整する。

年季の入った機械と職人たちの手作業。日本の製造業が培ってきた技が、明確な形としてここに存在している。

糸を引き揃える合糸機。合糸も撚糸も、コーン(糸巻き)ひとつを処理するのに十数時間を要することもある。細い糸は基本的に、弱い力でゆっくりと作業しなければきれいに仕上がらないからだ。

糸を引き揃える合糸機。合糸も撚糸も、コーン(糸巻き)ひとつを処理するのに十数時間を要することもある。細い糸は基本的に、弱い力でゆっくりと作業しなければきれいに仕上がらないからだ。


その後、綿や、ポリエステルなどのフィラメントと紙を引き揃えていく「合糸」、その合糸に撚りをかけ新たな糸に生まれ変わらせる「撚糸」、そしてワックスがけや太さの最終チェック作業「巻き替え」を経て、製品としての紙糸が完成する。

特に紙糸の場合は他の原糸と違いテープ状で納品されるため、工程の最初にも撚る作業が必要となる。

「昔から紙糸というものはあったのですが、Tシャツやニットといった製品に使われ始めたのはここ10年くらいのことだと思います。

製紙会社の加工技術が進化して細くスリットできるようになった。だから、肌に直接触れるような服に使う繊細な紙糸も作れるようになったんです」(光成さん)。

糸のクセをとるためのスチーム釜。1974年製の機械だがいまだ現役である。

糸のクセをとるためのスチーム釜。1974年製の機械だがいまだ現役である。


この工場の機械はどれも古い。撚糸機も合糸機も、糸のクセをとるためのスチーム釜も、約50年前から使っているという。

だが決して古くさくはない。丁寧にメンテナンスされながら使われ続けてきたものだけが備える、風格があるのだ。

「何だか格好良くないですか? 私はこの機械、好きなんです」と言う光成さんの意見に賛成である。またそんな古い機械が、ワクロスという新しいブランドの素材を作り出しているという構図も面白い。

「撚糸屋というのは本来待ち仕事、受け仕事です。でもこうして日々“糸のお見合い”を続けていると、生地作りや服作りの段階から関わっていきたいという、攻めの気持ちが生まれるんですよ。私たちがもの作りに参加すればもっといい提案ができるぞ、と。だから積極的に営業しています(笑)。

ワクロスさんのようなブランドと関わることで、我々もまた、進化していけるんです」(光成さん)。


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