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B面 好きすぎて仕事も熱すぎて。その想いの結晶が「SSZ」

ビームス原宿店のSSZブースは、ZINEや写真、フィギュアなど、加藤さんの“好き”なもので埋め尽くされている。

ビームス原宿店のSSZブースは、ZINEや写真、フィギュアなど、加藤さんの“好き”なもので埋め尽くされている。


加藤さんのB面(BEAMS面)は、サーフ&スケート部門のバイヤー兼、自身が立ち上げたブランド・SSZのディレクターという顔である。

スケートやサーフカルチャーを主軸にし、加藤さんの“好き”を詰め込んだSSZ。2016年にブランドの原型が生まれ、翌年正式にスタートすると、加藤さんはZINE同様、SSZに情熱を注ぐようになった。

90年代の名曲、パフィーの『これが私の生きる道』。カラオケ風のグラフィックを描いた「シン テレビ装コレクション」のTシャツ。

90年代の名曲、パフィーの『これが私の生きる道』。カラオケ風のグラフィックを描いた「シン テレビ装コレクション」のTシャツ。


2022年は、加藤さんが学生時代にハマったテレビ番組にオマージュを捧げた「シン テレビ装コレクション」にはじまり、秋冬にはSSZのタグにユニークなギミックを盛り込んだ新コレクションもローンチ予定だ。加藤さんの“好き”を詰め込んだSSZのプロダクトは、ことごとく斬新で面白い。

新作のタグにはSSZの説明が英語で書かれている。実はこれ、スマホの翻訳機能で英訳したデタラメな説明文だとか。

新作のタグにはSSZの説明が英語で書かれている。実はこれ、スマホの翻訳機能で英訳したデタラメな説明文だとか。


業界人を巻き込みまくった“裏ヴァンズ”

SSZのディレクターとしての加藤さんを象徴するのが、“裏ヴァンズ”である。



「渋谷のスニーカーショップ、ビリーズのイベントで、ヴァンズのオールドスクールを自由にアレンジするという企画展があったんですよ。そこで裏返しにしたオールドスクール“裏ヴァンズ”のアート作品を出展したのが始まりでした」。

アッパーの表地と裏地を反転させた“裏ヴァンズ”は、アートとしては高い評価を得るものの、商品化への道は遠かった。

“裏ヴァンズ”を商品化するために署名運動を実施。その名も「商品化への道」。

“裏ヴァンズ”を商品化するために署名運動を実施。その名も「商品化への道」。


「社内で相談したんですが、NGが出ちゃいまして……。でも、どうにか商品化したくて、ビームスの展示会で署名運動をしたり、サンプルを作ってお店に置いたりといろんな方に熱意を伝えました」。

上の署名活動により、SSZとのコラボという形で実際に商品化された裏ヴァンズ。スリッポンが2種発売された後、2018年には待望のオールドスクールが登場した。

上の署名活動により、SSZの別注という形で実際に商品化された裏ヴァンズ。スリッポンが2種発売された後、2018年には待望のオールドスクールが登場した。


加藤さんの思いは、ファッション業界を巻き込んで大きな渦となり、構想から2年でついに別注として商品化。第一弾はスリッポンだったが、その後、オールドスクールの“裏ヴァンズ”も完成させた。執念ともいえる取り組みは「即完売」という素晴らしい結果も残す。

A面でありB面でもある加藤農園4代目としての顔



加藤さんの実家は大船で古くから続く「加藤農園」。加藤さんは、その4代目という顔も持つ。

「物心ついた頃から農業を手伝っていますから、今はもうビームスの仕事の前後にする“部活”みたいな感覚。もちろん大変さもあるんですが、どちらもやりたいことだから全力を注ぎます」。

そんな農業への熱意は、ビームスの仕事にも繋がっている。今年1月に、農林水産省とともに立ち上げたプロジェクト「たがやすBEAMS JAPAN」が、まさにそうだ。

BEAMS JAPANと農林水産省、そして「食から日本を考える」というメッセージが描かれたタグも目を引く。

BEAMS JAPANと農林水産省、そして「食から日本を考える」というメッセージが描かれたタグも目を引く。


「農林水産省とビームス ジャパンのプロジェクトなんですが、僕がディレクションするということで、SSZのタグを使うことにはこだわりました。農林水産省の名前が目立つようにしたのも、その方が説得力が出ると思って(笑)。これがアツいんですよ」。

袋状になったボディがバッグにもなるベストは、収穫した野菜が即座に入れられる。

袋状になったボディがバッグにもなるベストは、収穫した野菜が即座に入れられる。


この日加藤さんが着ていたのも、プロジェクトの中で生み出された農作業服。

「このベストは袋状になっていて、収穫した野菜を入れることができるんですよ。便利だし面白いでしょ」。

慣れた手つきでインゲンを収穫する加藤さん。

慣れた手つきでインゲンを収穫する加藤さん。


農業にも使えるけど"ガチ"すぎず、普段から着られるディテール満載なプロダクトを目指したという。その随所に加藤さんの自由な発想力が見える。加藤さんにとって農業は、まさにA面でありB面でもあるのだ。


誰にも思いつかないユニークなアイデアの根源には“好き”がある。そこから生まれる熱意が、趣味や仕事を垣根なく循環することで、面白い結果は導かれる。加藤さんのライフスタイルを追いかけて、そのことがよーく理解できた気がする。

山本 大=写真 長谷川茂雄=文

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