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2022.06.29

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ネオンに集まる「半裸の体から湯気、ビール」の人々。世界サウナ紀行・フィンランド

ヘルシンキ市内最古のパブリックサウナ、コティハルユ・サウナ。「SAUNA」のネオンサインが赤々と光る

ヘルシンキ市内最古のパブリックサウナ、コティハルユ・サウナ。「SAUNA」のネオンサインが赤々と光る


当記事は、「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちらから。

ビジネスパーソンたちの間に「サウナ旋風」が巻き起こる以前、2016年からサウナにはまり始めたある人物がいる。サウナアドバイザーの大智由実子氏だ。

この連載は、大智氏が2018年からおよそ1年間、『花椿』のウェブで連載していた『世界サウナ紀行』の転載であり、サウナに「ハマり始めた」2016年から2019年にかけて、氏が世界のさまざまなサウナを旅した体験記である。

(※書かれているのは、その後に起きた世界的なコロナ禍や、空前のサウナブームが起きる前の体験だ。それだけに、現在はサービス提供を休止したり、営業形態を大幅に変更した施設もあり得る。そこをご承知おきいただいた上で、「withコロナ」の時代、改めて豊かな「withサウナ」の人生を模索するための情報としてお楽しみいただきたい。)

目の前に海や湖があれば直行してダイブ

さてさて。唐突に、なかば強引に始まった『世界サウナ紀行』ですが、第2回はさっそくサウナの本場フィンランドに行っちゃいます。

皆さんサウナというと、こうこうと明るく暑くて狭苦しい部屋の中でテレビ番組を見ながら(日本のサウナ室にはたいがいテレビがついています)汗をダラダラとかいて我慢比べをするもの……とお思いかもしれませんが、フィンランドの本来のサウナは全く違います。

まず、サウナ室の中にはテレビはございません。それどころか、薄暗く、灯りも最小限のところがほとんどです。そして湖畔など自然の中にあるサウナでは、風で木々のゆれる音や小鳥のさえずりなど自然のBGMが流れ、そこにサウナストーブの上にある熱々のサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」をする際の「ジュワァ〜〜〜〜〜」という音が立ち上がります。

あとは、己の身体から汗が湧き出てくる感覚をじっくりと味わいます。五感をフル回転して、自然と一体化した自身の感覚に向き合うのです。しっかりと汗をかいたらサウナ室を出てシャワーで汗を流してから外の風にあたってクールダウンするか、目の前に海や湖があれば直行してダイブします。

そして身体が冷えてきて暖を取りたくなってきたらまたサウナ室に戻ります。この、「温めて、冷やす」という一連の動作をひたすら繰り返します。そうしていると、あれこれ考えていた思考も止まり、身体にジワ〜ッと心地良さが訪れると同時にどんどん五感が研ぎ澄まされていくのです。

写真提供:大智由実子

写真提供:大智由実子



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ヘルシンキ市内最古のパブリックサウナ、コティハルユ・サウナ


半裸の真っ赤な身体から湯気を出す人々──

私が人生初、フィンランドでのサウナ体験をしたのは1928年創業、ヘルシンキ市内最古のパブリックサウナ、コティハルユ・サウナ(Kotiharjun Sauna)でした。ここは市内の住宅街の中にあり、ローカルの人たちが集う、日本で言うならば昔ながらの銭湯のようなところです。

ここを目指していくとまず目に飛び込んでくるのは大きく「SAUNA」と書かれたネオンサイン。さらにそのネオンサインの下には裸で腰にバスタオルを巻き、身体から湯気を立てながらビールを飲んだりおしゃべりに興じているローカルの人たち。

私が行ったのは初冬のすでに寒い時期。道を行き交う人たちはダウンやコートを着ているというのに、その横では半裸の人たちが真っ赤な身体から湯気を出しているのです。フィンランドではよくある光景なのでしょうが、何も知らない観光客から見たら目を疑う光景です。

しかしそんな半裸のフィンランド人たち(主に男性)にひるまず勇気を出して中に入り、受付で料金を支払い、女性は2階のロッカールームへ。シャワーを浴びてからサウナ室のドアを開けると……暗い!なんとなく天井が高くて広い空間なのはわかるのだけれど、目が慣れてこないと全貌がわからない程に暗い。

だんだんと目が慣れてきてようやく見えた全貌は、まるでバラエティ番組のひな壇のように天井近くまでそびえ立つ階段状のベンチ。日本ではベンチはせいぜい2、3段くらいなのですが、なんとここは5段もありました。

写真提供:大智由実子

写真提供:大智由実子


部屋の脇には大量の薪が──


サウナ室の中の温度は、上に行く程高くなっているのですが、さすがローカルのみなさんは最上段に座っていました。部屋の脇には大量の薪がつまれており、こちらの巨大なサウナストーブは薪を燃やして部屋全体を暖めていることがわかるのですが、「ロウリュ」をしようにも、サウナストーンが見えないし水の入ったバケツも見当たらない。

他のお客さんたちの行動を観察しているとどうやらストーブの脇についているレバーを回すとバシャッとストーブの中に水がかかり「ロウリュ」ができるらしい。ローカルのみなさんは遠慮なくガンガン「ロウリュ」をしていました。

そんな熱々のサウナ室でたっぷり汗をかいたらシャワーで汗を流し、バスタオルを巻いて勇気を出していざ外へ!半裸状態で公共の場に出る機会なんて滅多にないので、ちょっとドキドキしていたのですが、周りのフィンランド人は特に気に留めることもなく、それぞれクールダウンを楽しんでいました。

日も暮れて暗くなってきて、冷たい夜風にほてった身体を冷ましてもらいつつ、赤々と光る「SAUNA」のネオンサインをボーッと見上げ「あぁ、フィンランドに来たのだなぁ」と、道端で恍惚感に浸ってしまいました。

ヘルシンキでは、こんな都会の住宅街にある老舗サウナともう一カ所、自然の中にあるサウナで念願の湖ダイブもしてきたので、そちらはまた次回に。『世界サウナ紀行』、まだまだ続きます!


大智由実子◎世界中の様々なサウナを旅するサウナライターとして、花椿webで『世界サウナ紀行』を執筆する他、サウナ施設の広報も務めた後、サウナのみならず銭湯や温泉などお風呂カルチャー全般にも視点を広げ、個性豊かなお風呂を探究して現在に至る。お風呂以外の趣味は昭和の純喫茶とおんぼろ大衆食堂を巡ること。


大智由実子=文

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