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──オリジナル作品を制作することで、IP(知的財産)を獲得する狙いも?

和田:そうですね。新海誠さんと一緒に作品をつくっているコミックス・ウェーブ・フィルムの川口典孝社長から「IPをしっかり抑え、それに投資していくことによって、監督とスタジオの名前にバリューをつけ、権利を獲得していく。そこで生まれた利益をもってステップアップしていく」と教えていただいたことがありました。バブルではそういったビジネスモデルへの一歩を踏み出しました。

荒木:業界でいうと、ガンダムシリーズなどを手がけるサンライズさんはオリジナル作品に特化しているので、やっぱり強い。そこと比べると、WIT STUDIOはじめ多くのスタジオは、原作をアニメ化するのに向いた組織体系になっていますからね。

和田:アニメ化する職人集団はできあがっていますが、実際にゼロから企画したりデザインしたりする力はまだなかった。だからこそ、一歩進めるためにいまオリジナル作品に挑戦する必要があったんです。

認知の獲得と劇場体験

──オリジナルの劇場アニメーション制作の話を聞いた時、荒木監督はどう思われましたか?

荒木:今回は劇場公開が全国300館以上と規模が大きい。今まで我々がやっていた仕事は、Blu-rayを1万枚売る目標でのアニメづくりだったので、一気にお客さんの層を広げていく必要があるなと思いました。

<strong>荒木</strong>哲郎監督

荒木哲郎監督


──コアなアニメファンに向けてつくるものとは戦略が違うと。

荒木:そうですね。そのために、7歳の娘や祖父母にも届くような作品にしようと決めました。物語は大まかに「血が出るか、出ないか」の違いですけど、僕はこれまで「血が出て人が死ぬ」作品を多くつくらせてもらっていたので「今回は、誰も死なない話です」と話すと驚く方もいました。

とはいえ、自分には別の引き出しもあると思っていて。かつては「カードキャプターさくら」の仕事もやっていたので、そういう方向で監督になりたかった僕もいたんですよね。

なので、川村さんから「今までの作品とは全く違うイメージのものをつくってほしい」と言われたときには、またとない機会が来たと思いました。

演出家としての自分の可能性を広げたかったので。川村さんの要望を受けとり、その中で我々が新しい視点を獲得するのが、挑戦の1つでもありました。

──Netflixでの先行配信後に劇場公開するという方法も新たな試みですが、どんな意図が?

和田:「認知の獲得」です。オリジナル作品で一番難しいのは「知ってもらう状況をつくる」こと。それが、すでにマンガで人気を得ている原作もののアニメと異なる点です。

WIT STUDIO代表 <strong>和田</strong>丈嗣

WIT STUDIO代表 和田丈嗣


「バブル」の強みはアクションなので、配信で先に見てもらっても、「体験」を確認する場所として劇場にも来てくれるはずだという仮説を立てました。

まず配信することで認知を獲得し、気にいれば友人と共有したくなったり、体験したくなったりするはずだと。


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