テスラのモデルS(写真:tesla)
空気抵抗は、車体の造形がもたらす空気抵抗係数と、車体の前面投影面積の掛け算で決まる。
背の高いSUVは、たとえ外観の造形で空気抵抗を減らそうとしても、前面投影面積が大きいことが空気抵抗を増やし、消費電力を増加させてしまう。
ことに速度無制限区間のあるドイツのアウトバーンで、時速200kmという高速で走ることが日常的な人々にとって、電力消費が大きいことによる走行距離への制約は懸念材料になる。
EV専門自動車メーカーのテスラは、4ドアセダンの姿をする(しかし実態はリアハッチバック車である)「モデルS」で人気を得て、その後にSUVの「モデルX」を発売した。
現在はより量販型で小型の4ドアセダンである「モデル3」と、同じくXより小型の「モデルY」を販売している(日本はまだ発売されていない)が、4ドアセダンのモデルSもモデル3も人気を得ている。
より上級のモデルSは、プラッドと呼ぶ高性能車種を追加したところ、北米の納車だけで生産が追い付かないほどの受注になっているとのことだ。
欧米では4ドアセダンが根強い人気を誇る
SUVが市場を牽引してはいても、欧米では、4ドアセダンの市場が定着している。
日本は、車に限らず流行で市場が左右される風土だ。
それでも先に述べたようにミニバンやSUVを一度経験し、そのうえで自分に合った車種を次に選ぶとなった場合、改めて4ドアセダンに目を向ける人があっておかしくないのではないかと思うのである。
ただし、そのセダンの姿は、従来のシーマやフーガ、あるいはスカイラインなどに比べ、やや車高のある、乗り降りのよりしやすい、また室内も広々とした雰囲気を備えた新しいセダンの姿かもしれない。
タクシー専用車としてトヨタが販売しているJPN TAXI(写真:トヨタ自動車)
4ドアセダンではないが、タクシー専用車としてトヨタが販売する「JPN TAXI」も乗降のしやすさから人気だ。かといって、ミニバンほど背が高いわけではない。
そうした利便性に、上級車種の趣が新たに創造されるなら、SUV離れをする消費者が出てきてもおかしくない。
そのうえで、日産が得意とするEVで上級4ドアセダンが復活するなら、走行性能や静粛性を含めた上質さで、富裕層の興味をそそるかもしれない。
当然ながら、ヴィークル・トゥ・ホームの機能を備え、暮らしの安全を電力でEVが支えれば、上質な暮らしを継続的に営むことができる。
シーマやフーガが一旦姿を消したとしても、EVとなって復活する日が来れば、上級車の在り方として世界へ一石を投じるかもしれない。英国のジャガーはEVになることが明らかにされている。
シーマ、フーガ、スカイラインは、海外ではインフィニティで売ってきた車種でもあり、上級4ドアセダン復活の日を待ちたいものだ。
御堀 直嗣:モータージャーナリスト
>東洋経済ONLINEの著者ページはこちら