当記事は「Forbes JAPAN」の提供記事です。元記事はこちら。 パンデミックで需要が急増した企業の一つ、雑貨サイト「エッツィー(Etsy)」。技術の刷新とデータ主義でポスト・コロナも生き残る準備を進めている。
「マスク」ほど、コロナ禍で需要が爆発的に伸びた商品はないだろう。市内の店舗はもちろん、eコマースサイトでも品切れが続出したのは記憶に新しい。だが、マスク需要が一段落したその後は? ここでは、自社の経営を引き締め、最新のテクノロジーに刷新し、マスクを求めて訪れた一見の利用者を定着させたeコマースサイトの“進化”を紹介したい。
新型コロナウイルスのパンデミックで混乱していた2020年4月2日、オンライン雑貨マーケット「Etsy」のジョシュ・シルバーマンCEO(52)は、売り上げレポートに目を見張った。
業績の低迷に備えてコスト削減を急いでいたのに、予想外の売り上げの急増を目の当たりにしたのだ。しかも、その原動力が“マスク”だった。
「それまでは、当社サイトで“マスク”と検索すると、ハロウィーンで使うお面が表示されていました」
シルバーマンは直ちに、緊急会議を招集した。
「これはわが社にとっての『ダンケルク(第2次世界大戦でドイツ軍が英仏軍を追い詰めた戦い)』であり、“雑貨”で人々を救えると考えたのです」
エッツィーは販売者たちにメールを送り、マスクの素材やデザインの情報を共有した。プログラマーはサイトの検索システムを刷新し、マーケティングチームはウェブやSNSに広告を掲載した。その日のうちに、1万人の人々がマスクを販売するようになり、2週間後には10万人の売り手が誕生した。
20年末までに、エッツィーは7億4000万ドル以上のマスクを販売し、流通総額103億ドルの7%を占めるようになった。
当初の予想を裏切る形で、コロナ禍は同社に追い風をもたらし、年間売上高は111%増、純利益は264%増を記録。20年3月に最安値の約32ドルをつけたエッツィーの株価は、今では250ドルを上回り、時価総額は300億ドルを突破。サイトを日常的に利用する売り手は500万人に、買い手は9000万人に倍増した。
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