患者数が急増している成人の食物アレルギー、そのメカニズムについて解説します(写真:metamorworks/PIXTA)
当記事は「東洋経済ONLINE」の提供記事です。元記事はこちら。 成人の10人に1人に症状があり、近年、患者数が急増している成人食物アレルギー。花粉症の人や幼少期にアレルギーがあった人、食生活や就労環境に偏りのある人……誰もが発症リスクを抱え、重症化すると命を脅かすにもかかわらず、その実情はあまり知られていません。
本稿は、そのメカニズムから治療・対処法にいたるまで、成人食物アレルギー研究・治療の第一人者である福冨友馬氏が解説した最新著書『
大人の食物アレルギー』より一部抜粋・再構成してお届けします。
なぜ成人になって突然発症するのか
子どもの時には起こらなかった食物アレルギーが、なぜ成人になってから発症するのでしょうか。それには、発症のメカニズムが関係しています。
そのメカニズムの1つとして、ある食物を毎日のように食べていると、次第にその食物に対するアレルギーになることがあります。今まで問題なく食べられていたものでも、食べ続けているうちにアレルギーを発症することがあるのです。
もしかすると、食べているものに新しくアレルギーになりやすくなる原因が生じたり、体質が変化したりといったことがあるのかもしれませんが、それが何であるか、現在の医学では十分にわかっていません。
もう1つのメカニズムは、鼻や目、気管支の粘膜、皮膚などのアレルギーとの関係です。成人になってからでも、アレルギー性鼻炎、喘息、アレルギーの関係した皮膚炎などを発症する例は多数あります。
仕事などで特定の食物を頻繁に扱っていると、鼻・目・気管支・皮膚などを介して、その食物に対してアレルギーになることがあり、それがさらに悪化していくと、その食物を口にすることによって食物アレルギーを起こすケースもあります。
食物ではなくても、花粉やダニのような環境中に普通に存在するアレルゲンが食物アレルギーに関与することがあります。花粉やダニなどの環境アレルゲンと食物アレルゲンの形が似ている場合、環境アレルゲンに対してアレルギーがある人が食物アレルゲンに対してもアレルギー反応を起こしてしまうわけです。
これを「交差反応」といいます。交差反応とは、免疫細胞が、構造が似ているアレルゲンを間違って異物とみなして過剰な免疫反応を起こすことをいいます。
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