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いい塩梅まできたら、あとは足を通さないに限る





生から育てるのはやっぱり楽しい。すくすく育つ我が子を見るように、目に見えて理想に近づいていることが分かる。ただ、ある程度育ったら、“子離れ”は必要だと根岸さんは話す。

「ここまで育ったら、もう肌着に近いというか、ジャージーみたいな感覚ではけます。ただ、“すごくいい期間”って短いんですよ。それ以降は白茶けてきちゃう。だったらはかないほうがいいなってことで、僕は飾っています。

綺麗な青さから白味の強いものになるのにだいたい1~2カ月ほど。すぐなんですよ。以前、僕がはき込んでものすごく綺麗だったデニムを友人が勝手に持っていって、真っ白になって返ってきたことがありました。あれは参りましたね(笑)」。



「本来、色落ちってライフスタイルの一環ですから、そこまで真面目にはく人って、ヨーロッパなどではあんまりいないんです。

もちろん、イタリアにもカンディアーニ社という生地屋があり、そこの生デニムもとてもいい。でも、日本の生地は全然はき心地が違います。そして、それ以上に色落ちにこだわる人数が違う。そういう環境の違いが大きいんでしょうね」。

そして今季、満を持して「今までのノウハウを凝縮した、これまでのデンハムとは完全別モノのメイド・イン・ジャパンデニムを出す」と宣言する根岸さん。

「香港にドクターデニムみたいな人がいて、デンハムがもっとも表現したい生地を一緒に開発したんです。完成までに5年かかりましたよ」。

そのデニムもすこぶる気になるところだが、まずは我々には想像もし得ない、日本デニムのクオリティを背景とした根岸さんの色落とし術を試してみてはどうだろう。きっと驚くこと請け合いである。

「世界最高峰! 日本デニムの今」とは……
「デニムと言えばアメリカ」。かつてのヴィンテージブームを経験した人たちはそんな先入観を持ちがち。しかし今、世界を見てみると、プロはこう口を揃える。「デニムと言えば日本」。なんで? 方々から探る、世界最高峰、日本デニムの今。
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伊藤恵一=写真 菊地 亮=取材・文

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