「世界最高峰! 日本デニムの今」とは…… 日本デニムの酸いも甘いもを知るスロウガン/オーベルジュの小林 学さんをして“最高のデニム”と言わしめるものとはいったい何か。
前編はコチラ まずは「キング・オブ・デニム」を定義しよう
小林さん私物の、1951年製のリーバイス・デニムタキシード。黄金期の素材で作られた、遊び心満点の激レアヴィンテージ。
古着バイヤーやブランドディレクターたちの手によって、さまざまなヴィンテージデニムが日本にもたらされた。そこからデニムの研究は進み、現存数やアメリカの歴史から、徐々に“稀少種”などが輪郭をなしていく。
そして、とある時代のデニムが今もなお最高と呼ばれるようになった。
業界内でいう『47』『51』というモデルである。
「これは、1951年に作られたリーバイスのデニムジャケットです。1945年に終戦し、1947年にリーバイスは再生産が軌道に乗り出すのですが、ちょうどその頃のデニムがいちばん色も濃くて、ステッチも真っ黄色になった時期なんです。
この生の状態が、『我々が目指すところのアメリカンデニムのキング・オブ・キングと位置付けられるのではないか』とされていて、それをベースに今季作り上げた生地がこちらですね」。
上に重ねられているのが、黄金期に製作されたデニムを目指して作られたオーベルジュの最新生地。下は、「ヨーロッパのトップメゾンがデニムを製作したら」とのテーマのもと作り上げられた特別な生地だ。
今季のオーベルジュは「アメリカとヨーロッパの比較」をテーマに、アメリカのヴィンテージをイメージしたデニムとヨーロッパのキレイめなデニムを、誰が見てもわかりやすいように作っているという。もちろん、すべてジャパンメイドだ。
では、ヨーロッパのほうも見ていこう。
アメリカとは一線を画す、ヨーロッパならではの独特な手法で織り上げた特別なデニム生地は、どこかアメリカ製よりも濃厚で上品。
「この生地は『フランスのトップメゾンがデニムを作るのであればこうするのではないか』という着眼点で仕上げています。メゾンではよく、コットンにシルクを巻きつけたりしながらスーツを作りますが、こちらも同じようなアプローチで、綿とシルクとリネンを駆使しました。
アメリカのデザイナーが絶対に考えないような、いわば日本人の蓄積された知恵とフランスのエスプリを効かせたデニム。もっと言えば『アメリカに媚びないデニム』ですね」。
リスペクト・リーバイスな最新日本デニム
デニムパンツ「PHIL MENPU」2万8600円/オーベルジュ(ホワイト代官山 03-3770-5931)
ブランドの最新作となるこちらは、オーベルジュの設立からブランドの“顔”として君臨する5ポケットデニムである。
生地の組成や染色濃度、各種意匠はアメリカを代表するリーバイス 501XXをベースにしつつ、シルエットはストレートながら耳付きデニムの限界の細さに仕上げている。
裾幅は、オールデンやパラブーツといった革靴との相性を考慮して19cmに設定。
Gジャン「PREMIER」5万2800円/オーベルジュ(ホワイト代官山 03-3770-5931)
こちらは’50年代製のデッドストック、リーバイスの“ファースト”タイプを分析、研究し、縮小前の店頭サイズをイメージして仕上げた一着だ。すでに縮んでしまった古着ではなく、「本来設定されていた、当時の新品サイズで」をコンセプトに作られている。
その生地は、タテ糸をダラつかせることで織り上がりの表面に凹凸感を生み出す、通称“ローテーション織り”で仕上げた。
打ち込みもやや甘めで、アウターとしての着やすさもしっかり担保している。ボタンは、100年以上前のフレンチヴィンテージのメタルボタンがアソートで付属する。
どちらも生地オタクの面目躍如といったクオリティで、まさにジャパンメイドデニムの魅力が見事に表現されている。
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