「まずは、面白がる」
『うんこミュージアム』を筆頭に、斬新なアイディアで数々のイベントやコンテンツを成功に導いている面白法人カヤック。会社全体の「まずは、自分たちが面白がろう。」というヴィジョンは、阿部さんの人生哲学と重なる部分がある。
「カヤックのいいところは、みんな本気で楽しんでいるところ。アイディアが形になって世に出る頃には丸く無難なものになっていることってよくあるけど、カヤックでは『それも通っちゃうの!?』ってぐらい、フィルターがなくて、自由なんです」。
とはいえ、アイディアが形になるまでは、当然苦しい時間も存在する。
「うんこミュージアムに関して言うと、『うんこ』っていうキーワードが入っていると面白いように感じてしまうんですが、いかに固定観念を水に流すかを突き詰めました。悩みすぎて巨大なうんこが立ちふさがる夢を、よく見てました(笑)」。
阿部さんはアイディアを生み出すとき、どんなことを心がけているのだろうか。
「あんまり気負いすぎないこと。音楽でいえばジャズのように。そのときのグルーヴ感を大事にしています」。
40代を迎え、自分の「面白い」を追及できる環境に身を置いた阿部さん。肩肘をはらず自分らしく仕事を楽しんでいるようにみえるが、年齢を重ねるごとに仕事のスタイルにも変化の兆しが見えているという。
「最近は自分よりも周りを活性化させたいと思いますね。昔はもっと自分が自分がって感じだったけど、チームメンバーの良さを引き出すには、どんな言葉をかけたらいいのかを考えるようになった。プレーヤー側もいいけど、いろいろ仕掛けて裏でほくそ笑むのも楽しいなと(笑)」。
今後はこれまでのノウハウを利用して、さらなる体験コンテンツを生み出したいという阿部さん。「面白い」を求めて、これからもそのほくそ笑みは続きそうだ。
藤野ゆり(清談社)=取材・文 小島マサヒロ=写真